〈ユメノ視点〉










アオシ「リップなら俺は持ってないぞ?笑」






おじさんが連れて来てくれた遊園地は

半年ほど前に麻梨子から紹介された

リップ男と来た遊園地だった






「・・・・よりによって此処…」






リップ男と最悪なデートをした後に

桔平が浮気相手と仲良く歩いているのを目撃して…






( おじさんとバーで会ったんだ… )





「・・・手…繋いで大丈夫?」






コッチじゃ並んで歩いてくれなかったし

見られちゃまずいのかなと思い

おじさんに確認すると

「手は了承とるのかよ」と

可笑しそうに笑っているから

大丈夫なんだと分かり

おじさんの手に自分の手を重ねた






「ふふ…このまま一周歩こう?笑」





アオシ「・・・歩いて何すんだ?」





「デート!笑」






遊園地と言えば絶叫マシンなんだろうけど…

ジェットコースターに乗って

目を閉じてしまう時間が勿体無い気がして

おじさんと手を繋いだまま園内を歩き回り

「デートと言えばコレよね」と

観覧車の列に並んだ






アオシ「ギャーギャーわめくよりかはいいかもな…」






「おじさん絶叫マシン嫌い?」






アオシ「別に好きでも嫌いでもねぇ

   最後に来たのも学生の頃だしな」







おじさんの幼少期が想像出来なかった事を思い出し

「どんな子供だったの?」と問いかけた






アオシ「 至って普通のガキだったぞ」






「一人っ子だとオヤツもオモチャも

  独り占めだし…ワガママにならなかった?」






アオシ「・・・お前確か兄貴がいたな?」






おじさんの質問に「うん」と頷くと

「一人っ子じゃねぇのにワガママに育ったのか?」と

意地悪な顔をして笑うおじさんに

「ワガママって何よ」と言って

繋いでいる手をブンブンと振ると

観覧車の順番が回って来て

係の人に「コチラにどうぞ」と呼ばれた






アオシ「手…離せ…」






観覧車に乗り込み

おじさんの隣りに座ろうとすると

「バランスが悪くなる」と言われ

向かいの席に座れと手をシッシッと

犬を追い払うみたいな扱いをされ

ムッとしたまま向かいの席に腰を降ろし

手を離さないでいると

おじさんが繋いだままの手を呆れた顔で見ていた






「だってデートなのに離れろとか言うし…」






アオシ「・・・・・・」






「今日は私の為のデートなんだから…

  今日だけは…ずっと繋いでて…」






コレはおじさんからの私への

おはぎのお返しのデートの筈だから…





( 特別な物はいらない… )





今日一日を私にくれたらいい…

それだけでいいから…






アオシ「・・・・・・」






「観覧車に乗ってる間も

 降りた後も…バーにいる間も…繋いでて」






アオシ「・・・・飯食う時と運転中は離せよ」






そう言って立ち上がると

私の隣りに座り直し

少しずつ上がっていく景色を眺めている

おじさんの頬に顔を寄せ

前の様に触れるだけのキスをしても

おじさんは顔をコッチに向けてくれず

あの日の駐車場の時の様に

キスに応えてくれようとはしない…






「・・・・あお…し…」






手をギュッと握りしめながら

おじさんの名前を呼ぶと

数秒経った後におじさんが顔をコッチに向けてきた






アオシ「・・・・・・」





「・・・だめ?」





アオシ「・・・・・・」






初めておじさんにキスの了承をとると

おじさんは私の目を見たまま

何かを考えている様に感じた…






アオシ「・・・今はコレで我慢しろ」






そう言って顔を寄せてきた

おじさんの唇は私の額に優しく触れ

おじさんの服に手を伸ばして

「もう一回して」と額のキスをねだると

「聞き分けのねぇガキだな」と言う言葉と一緒に

優しいキスが降ってきた












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