ホワイトデー

〈ユメノ視点〉










「今日は特別よ?笑」





朝からピーコにご飯とは別に

トウモロコシを出してあげると

ピーコは喜ぶ様にご飯のお皿に顔を突っ込んでいる






「ふふ…離れるのは初めてだけど…

  ニーコと違って大丈夫そうね?笑」






ご飯とトウモロコシ一直線のピーコには

私の言葉は聞こえていない様で

顔をあげる事もしない…





「ニーコと話すからいいもん」と言って

手に少し握っていたトウモロコシを

ニーコの上に置き「明日には帰るからね」と

寂しがらない様に声をかけていると

私の左側からピーコの顔が出てきて

ニーコにあげたトウモロコシを食べ出した





「まだ自分のお皿にあるじゃないのよ」





どうせ後から

ピーコが食べるのは分かっていたけど…

ズカズカとコッチに来て

トウモロコシをつつく姿を見ながら

「末っ子ってこんなもんよね」と

小さく頃のお兄ちゃんと自分を思い出し

クスリと笑みが溢れた






兄「母さん、俺のアイス知らない?」





母「えぇ?冷凍庫にあるでしょ?」






お兄ちゃんの物のは大体私の物で…

オヤツもオモチャも…

バレンタインで貰ってきたチョコレートすらも

お兄ちゃんが抱きしめて隠していた

本命チョコ以外全て

毎年私の胃袋に届けられていた







兄「お前…くったんだから

  ホワイトデーは少し出せよな?」






「好きな子いるのに

 他の子達からもチョコレート貰うなんて最低だよ

 アタシは本命の子の為に

 食べてあげてるだけだもぉーん」






お兄ちゃんが本気で私を怒らない事は分かっていたし

お母さんやお父さんも大して叱る事はなかった…






( 一人っ子だったらどうなってだんだろ… )






更にワガママだったのか

それとも分け与えてくれるお兄ちゃんがいなくて

もう少し辛抱の出来るいい子だったのかなと

ピーコを見ながら考え

おじさんはどうだったんだろうとふと思った






「・・・なんか…想像できないかも…」






お父さんとお母さんが

社長と秘書みたいな雰囲気な様に

おじさんがお父さん達に甘える姿が想像出来ないでいると

「何がだ」とおじさんの声がした





アオシ「どうせくだらない事考えてたんだろ」





そう言って口の端を上げたまま

私の隣に腰を降ろすと

ピーコに「大人しくしてろよ」と

落ちているトウモロコシを一つ取って

目の前に転がしてあげている





ピーコは相変わらず私には無視だけど

おじさんには近づいて甘えていて…





私に甘えていたニーコと

おじさんに甘えるピーコ…

ニーコが此処にいたら

バランスの取れた4人家族だったのになと

おじさんの顔を横から見上げた





お父さん達に甘える幼少期のおじさんは

想像出来なかったけれど

父親としての…旦那さんとしてのおじさんは

想像出来てしまい

自分の頭をおじさんの左腕にそっと当てた







( ・・・きっと…奥さんになる人は幸せだ… )







アオシ「後生大事にする…

   それ以外言わねぇだろうな」







だって…

おじさんの奥さんになる人は

来世までもおじさんから愛して貰えるんだから…



















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