セント…

〈ユメノ視点〉









( ・・・・・・ )






居間にかけられている

お洒落でもなんでもない

カレンダーを眺めていると…





アオシ「・・・うちには関係ないからな…」






「・・・・・・」






おじさんの声が聞こえ

唇を尖らせて振り向くと

おじさんは腕を組んで

細めた目をコッチに向けていた






アオシ「何もするなよ」






「・・・最近お父さんにそっくりね…」





お父さんはいつも腕を組んで

袈裟の袖の中に両腕を突っ込んだ状態で

私やお母さんにあれこれと指示をだす…







「・・・ただ食べるだけもダメなの?」






アオシ「はぁ…食いたきゃ食え」






「・・・おじさんも…

 食べるだけならいいんじゃないの?」

   





アオシ「・・・大人しくしてろ」







そう言ってお参りに行く支度を始めに

部屋に歩いて行き

その憎たらしい背中に「ケチ」と呟いた…





おじさんはいつもの様にお参りへと行き

お父さんも「出てくる」とだけ言って

出かけて行き…






( よりによってお母さんか… )







「・・・・・・」






足袋を洗いながら

お母さんのいるお寺側に顔を向けて

「はぁ…」と重いタメ息を吐いた…





お父さんは前ほど口煩くなくなったけれど

お母さんは変わらず小言ばかりで

お寺の決まり事に凄く煩い…





母「住職が口を開いている時に

  話を遮る様な事を言ってはダメよ…」





母「住職が見えたら道を開けなさい」





母「住職の物を勝手に使ってはダメ」







まるでであるお父さんを

神みたいに扱っていて

仏壇に供物をあげる時間まで決まってる…





( だいたいでよくない? )





5分過ぎただけで

「夢乃さん!」と大きなミスでもしたかの様に

私を呼ぶお母さんに毎度唇がき出ていた…





( ・・・きっとダメだよね… )





お母さんに相談しても

おじさん以上に怪訝な表情をする事が想像でき

「なんで横文字なのよ…」と

汚れている足袋をゴシゴシと洗い続けた





足袋を干していると

足元に来たピーコが

洗ってる時に土に落ちたモコモコとした

泡のかたまりに口をつけようとしたから

「ダメよ」と慌てて抱き上げて

離れた場所へとピーコを降ろし

洗剤の落ちた部分をホースの水で

洗い流していると

水たまりが出来ていた





( ピーコが飲まないかな… )





スコップか何かで水をとった方がいいのかなと

考えながら水たまりに手を当てると

表面の土がドロッとしていて

子供の時によくしていた泥遊びを思い出した






「懐かしい…笑

 泥団子とか作ってたんだっけ?」






そう言って水たまり下にある

柔らかい泥を集めて丸い泥団子を作りながら

「ん?」とある考えが閃いた





( ・・・これなら…大丈夫? )





掌の上にある泥団子を見ながら

ニッと口の端を上げて

「ピーコ!ありがとう」と

自分のお気に入りスペースに座って

日向ごっこを始めているピーコにお礼を言い

サンダルを抜いで部屋へと入り

商店街に行く準備を始めた





居間のテーブルに商店街に行くとメモを残し

自分の靴を履いて外に出ると

水たまりの水土に吸収されたのか

ほとんどなくなっていた





( 大丈夫そうね… )






「出掛けるからちょっと古屋に入っててね」






そう言って掌に少しだけ握っていた

トウモロコシを古屋の中に置くと

早足で古屋に入るピーコに

「ふふ…」と笑い古屋の扉を閉めた





「行ってくるわね、ピーちゃん」





私が離れても鳴き声をあげないピーコに

「ニーコは甘えん坊だったのね」とポツリと溢し

ニーコの方へと顔を向け

「ピーコをお願いね」と言って出掛けた









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