縁《えにし》線
〈ユメノ視点〉
マリコ「ホラ!美味しいの沢山よ?笑」
「・・・・・・」
朝起きたと同時に
「出かける準備して!」と言われ
気分が中々上がらないし
寝癖もついていたから
簡単なお団子ヘアにしていると
「ダメ!可愛くして」と
鏡越しに映る麻梨子から言われた…
麻梨子が連れて来たのは
新しく出来たばかりの
スイーツビュッフェのお店で
何故ここに連れて来たのかも
何となく分かっていた…
マリコ「アッチにはこんなのないでしょ?」
「・・・・・・」
マリコ「あっ!この後はバーゲンに行こうか?
まだまだセールしてるだろうし」
私は…明日こそ
お寺に戻る事になっている…
麻梨子のマンションに逃げようと
電車に飛び乗った瞬間
かかってきた電話の相手は
おじさんのお父さんだった…
「・・・・もしもし?」
父「・・・ゆっくり出来たかな?」
「・・・おっ…お父さん!?」
何で携帯番号を
知っているんだろうと驚いたけれど…
( ・・・あの時… )
初めてお寺から抜け出して
生理用品を買いに出かけた時に
私に連絡がつかず…
だいぶ探し回っていたようだ…
母「外出する時はメモを残しなさい」
探し回るのは
お父さんではなくお母さんで…
緊急用にと携帯番号を教えていた…
お母さんからワザワザ
聞いたんだと分かり…
電話してきた理由はお見合いの件かなと思い
お父さんが切り出すのを待っていると
父「何時に帰り着くんだ」
「・・・えっ…あの…」
父「夕飯の準備もあるから
帰る日にちと時間はしっかり連絡しなさい」
( そう言う事か… )
お父さんからは切り出しにくいかなと思い
「実は…」と気を遣った…
「・・・体調が優れなくて…
長時間の移動が難しいので
体調が落ち着いてから戻ります」
父「・・・・・・」
帰る日にちを確定しないで
電話を切ろうかと思っていると
「10日には戻りなさい」と
電話のスピーカーから聞こえてきて
「えっ?」と思わず声が漏れた
父「3日もあれば体調も戻るだろう
10日のお昼には戻って来なさい」
「えっ…あの…」
まさか呼び戻されるとは思ってなく
直接会ってお見合いの話を
されるのかと思っていると…
父「・・そんなに長く家を空けるものじゃない」
「・・・・・・」
父「早く戻って来なさい」
きっと…私の嘘は見破られている…
体調が悪いと言っている私の後ろからは
電車のガイダンスが流れていて
私が何処にいるのかも分かった筈だ…
でも1月7日の今日ではなく
3日後の1月10日までに帰って来なさいと言う
お父さんの言葉の意味が嬉しかった…
私が帰りたがって無い事を感じとり
この3日間の内に心を落ち着かせて
帰って来いと言っているのが分かったから…
お見合いの件だったり
いつも連絡もなく外食をしてきたりで
「クソ坊主」と何度も呟いたけれど…
お父さんはヤッパリ〝住職〟で…
浄岳寺の住職さんの様に
人としての何かが大きく感じた…
「・・・10日のお昼過ぎには戻ります」
お見合いがどうなったのかは分からないけれど
おじさんの父親であるお父さんが
「帰って来い」と言っているのなら
私はまだ…あのお寺の〝嫁〟なんだろうと思った
マリコ「まぁ…20万よりは
50万の方が断然いいけど…」
目の前にいる麻梨子は
フォークでプチシュークリームを
グサッと刺しながら
「分かってるわよね?」と
釘をさしてきた…
マリコ「・・・春で…その糸とは離れなさいよ…」
「・・・分かってるよ…」
7日の日に麻梨子のマンションへと行き
10日からまたお寺に戻ると伝えると
おじさんに変な想いを抱いて
帰って来なくなるんじゃと心配した麻梨子は
次の日あの…占い師のお店に私を連れて行った…
占「・・・赤い糸ではなく紫の糸です…」
「紫??」
占「・・
マリコ「
私もそう言う意味なのかと思い
占い師のオバさんの顔を覗き込むと…
占「・・・あまり…いい糸ではありません…」
「・・・え?」
占「運命線の60%の方と接する時に
この…蓬莱蒼紫とはもう近い距離でしたか?」
「・・・・・・」
神宮寺先輩と個人的に近づいたのは
あの食事の日が初めてで…
おじさんとは数回会った後だった…
占「後藤守も…糸は赤で40%の方です」
マリコ「あの不動産の!?」
占「・・・蓬莱蒼紫と出会っていなければ
アナタはどちらかの相手と付き合っていましたよ」
「・・・・・・」
占「縁線は人それぞれによって
意味や形も変わりますが
アナタと蓬莱蒼紫の縁線は…中々…」
「中々…なに?」
占「・・・濃ゆい紫ですからね…
蓬莱蒼紫の側にいればいるほど
運命線の相手と上手くいく事はありません…
縁線は…運命線よりも
引っ張られる力も強いんですよ」
「・・・その…縁線の相手とはダメなんですか?」
運命線の相手よりも
そっちとくっつけばいいじゃないと思った…
占「それが出来ないから厄介な糸なんです」
オバさんは「ふぅー」と
困った様なタメ息を吐くと
「基本…婚姻を結ぶのは赤い糸の方とです」
と紙に書いて説明しだした
縁線の糸で繋がっている相手とは
何かの理由があって〝縁線〟になっているらしく
引っ張り合う糸の力はどの糸よりも強く…
縁線の相手と近い距離にいると
本来の運命線や友情線…
どの相手との〝
縁線の相手が優先され
繋がっている糸の色が薄まったり
繋がるべき相手とそうなれないまま
占「同性同士で繋がる事もありますし
アナタの様に異性と繋がる事もあります」
マリコ「当たってるじゃん!」
「・・・当たってる?」
マリコ「せっかく紹介した健太郎君とのデートを
放り出して勝手に帰ったり
お坊さんについて山奥のお寺に行って
アタシとも中々連絡取れなかったじゃん!」
「・・・・・・」
言われてみれば…
そうな気がした…
あのリップ男とのデートを
切り上げて帰ったあの日…
バーでおじさんと会っていたし
お寺に行ってからの2ヶ月間は
麻梨子とも…他の誰とも
連絡をとっていなかった…
占「アナタがそうな様に…
相手の蓬莱蒼紫も…
アナタとの
本来の糸とは結ばれませんからね」
「・・・どうにかならないんですか?」
占「・・・・離れる事です…
縁線は…ある意味呪われた運命線ですから」
おじさんと私には…
赤い糸は繋がっていなかった…
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