1月7日

〈ユメノ視点〉









帰りたくないけれど…

家族は会社に勤めたままだと思っているから

7日の日の朝には電車に揺られていた…





( ・・・まだ怒ってるかな… )





28日のあの日以来

おじさんとは話していないし

何の連絡も届いていなかった…





普通…年を越したし…

「明けましておめでとう」とか…

「何時に帰って来る?」とか…

連絡がありそうだけど…





マリコ「ぜんっっぶ!お芝居なの!」






麻梨子の言う通り

私達の関係は〝普通〟じゃなく

ただのお芝居なんだ…





「・・・帰りたくないな…」





年明けて直ぐに

お見合いはあると言っていたし

もうきっと終わっている…


 


どんな顔で玄関の扉を

開けていいのか分からないし

「ただいま」と言っていいのかも分からない…







母「麻梨子ちゃんはお寺で式をあげるの?」






「えっ??」






母「持って帰って来たお漬物よ!

  風呂敷にお寺の名前が入っていたから

  旦那さんの家系がそっちの方なの?」






おじさんのお母さんが

包んでくれた布風呂敷に

お寺の名前が刺繍されていたらしく

「麻梨子から」と言って

漬け物を持ち帰ったから

ウチのお母さんは勘違いをしたようだ…





タッパと布風呂敷が入っている

トランクに目を向けて

「はぁ…」と息を零し

「何で?」と呟いた…





もしもお見合いの話がまとまれば

私とおじさんの話は流れてしまうのに

どうなるのかも分からない私に

お土産を持たせた意味が分からなかった…





「刺繍入りの風呂敷に包んでまで…」





窓に目を向けると

足早に通り過ぎていく景色が

どんどんお寺に近づいていると

余計に感じさせて「嫌だな」と呟いた…






乗り換え用の駅に着き

新幹線のホームを歩きながら

引きずるトランクが妙に重く感じる…






アオシ「勝手な事はするな」


 




あの日のおじさんの顔を思い出し

クルッと向きを変えて

違う乗り場へと歩いて行った






「・・・・会いたくない…」






お寺に戻らないと決めたと同時に

トランクの重みは消えて

ツカツカと足取りも軽くなった気がした





【 また逃げるの? 】





そう聞こえた気がするけど

足を止める事なく

麻梨子のマンションがある方面への

電車に飛び乗り

スマホを取り出して

泊めてほしいと連絡を入れようとすると

スマホの画面が着信画面に切り替わった





「・・・えっ…誰??」





知らない番号だし…

携帯電話ではなく

何処かの県の固定電話からだった…





( ・・・何…間違い電話? )





どうしようかと悩んだけれど

通話ボタンをスライドして

恐る恐る「もしもし?」と問いかけた













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