24歳…

〈アオシ視点〉









父「明日も早いから直ぐに休め」






助手席から降りた住職は

「冷えるな」と呟いて

玄関へと歩いて行き

俺は車を駐車場に停め

モニターに表示されている時間に

「はぁ…」とタメ息を吐いて

カチッとエンジンを切った





暗い道を歩きながら

住職の後に風呂に入り

読経どきょうをしてから眠りにつく事を考えると

4時間程度しか眠れないなと思い

歩く足を早めた






( ・・・明日は水戸家だったな… )






明日のお参り予定に

麗子の家が入っている事を思い出し

嫌味の一つや2つは言われるだろうなと思った…






長時間の運転と愛想笑いを浮かべて

相槌を打ち続けた疲れを感じ

首の後ろに手を当てて

後ろにクイッと伸ばしながら

「はぁ…」とまた疲れたタメ息を溢し

自分の部屋の襖を開けて

中に進もうとした足を止めた…






アオシ「・・・・は?」






薄暗い部屋の端に

畳んだ筈の布団が敷かれていて

毛布には膨らみの山があったからだ…






( ・・・畳んだよな… )






今日は朝から

隣りの県の檀家の元へと参っていて

お参り後に住職の知り合い達と食事をする事になり

帰り着いたのは22時を過ぎで…





お袋が気を遣って布団を敷いたのかと思ったが

お袋ならあんな雑な敷き方をする筈がなく

毛布の膨らみに近づいて行くと

小さな寝息の様な音が聞こえてきた…






アオシ「・・・何やってんだコイツは…」






毛布から少しだけ出ている頭を見て

夢乃がまた俺の布団に横になっている事が分かり

呆れて見下ろしていると

廊下から近づいて来る足音が聞こえ

廊下側へと足を向け襖を開けると

風呂から出たオヤジが

「上がったから早く入りなさい」と声をかけてきた





後から入る俺に気を遣って

体だけを洗って出たんだろうと分かり

「はい」と返事を返して

着替えを手に風呂場へと向かった






体を洗って湯船に浸かり

熱い湯に体中の血の巡りが反応するかの様な感覚に

「はぁ…」と言って目を閉じた






( ・・・・・・ )






今日のお参りの事を考えていると

俺の布団で眠っていた夢乃が

朝方、台所でガキみたいに甘えてきて

軽くあしらったら頬を膨らませて

怒っていた事を思い出し

ゆっくりと目を開けた…






アオシ「・・・・・・」






夕飯までには帰ると言ったが

結局…住職と外で済ませて来て

夢乃はお袋と二人で食った筈だ…





朝の態度のままなら

俺に腹を立てて

自分の部屋で寝ているだろうが…





何故、俺の部屋で…

俺の布団で寝ているのかが

サッパリ分からず

夕飯の時にお袋から

いつもよりもキツイ小言でも言われたのかと

ぼんやりと考えながら

また目を閉じて…




明日以降のお参りの事を考えだし

夢乃の事は頭からなくなった





風呂から出て台所で

コップ一杯の水を飲み干してから

自分の部屋へと行き

部屋の端にある布団を見て

そうだったと思い

眉間にシワが寄るのを

自分でも感じながら

夢乃へと近づき「おい」と声をかけた






「・・・zzZ」





アオシ「・・・チッ…」






部屋の明かりをつけても

目を覚ます事の無い夢乃に

どんだけ起きねぇんだよと舌打ちをし

夢乃の部屋に連れて行こうと

毛布を剥ぎ取ると…






( ・・・・・・ )






夢乃は体を丸くして眠っていて…

先週俺が買ってやった目覚まし時計が

顔と手の側にあり…

抱き締める様にして眠っていた







アオシ「・・・・・・」







「知ってるのはおじさんだけなんだから

  ちょっと位…優しくしてくれたっていいじゃない」








夢乃が言っていた言葉を思い出し

俺の腕に引っ付いて来て

「何時に帰る?」と問いかけてきた顔が過り…






お袋に小言を言われたんじゃなく

寂しくてここに寝ているのが

何となく分かった…






アオシ「・・・24だよな…」






俺の中の24歳はそれなりに大人で…

手のかからないイメージだが

目の前でガキみたいに

他人の布団で寝息を立てている

夢乃を見て「はぁ…」とまたタメ息を吐き

寒そうに更に体を丸める夢乃に

剥ぎ取った毛布をもう一度かけてやった


















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