冷たい…
〈ユメノ視点〉
お玉でお味噌汁をかき混ぜながら
チラチラと見える具材の人参と大根を
ぼーっと眺めていた…
「・・・・・・」
4時半に起きて
お味噌汁を作る生活には慣れたけれど…
( ・・・質素だな… )
相変わらず、お味噌汁と白米だけの朝食や
煮物ばかりの夕食にも飽きがきていた…
「せめて目玉焼きだけでも…」
女の私でもヒモじい食事なのに
男のおじさん達がこの食事で
本当に大丈夫なのかと心配すらしている…
アオシ「おい…」
おじさんの声にハッとして
振り返ると居間に続くドアから顔を出していた
アオシ「住職と早めに出るから先に飯の準備しろ」
「もう行っちゃうの?」
まだ5時過ぎなのにと
小さく呟いておじさんを見上げると
今日のお参りする檀家さんの家は
離れた場所にあるらしく…
早めに食事をすませて
お父さんと二人で出かけるようだ…
「・・・何時に帰って来る?」
アオシ「・・・・・・」
お味噌汁をよそわない私に諦めたのか…
自分でお椀を出して
お味噌汁をよそいだしたおじさんの
袖を掴んで「ねぇ…」と
問いかけるとおじさんは
「夕飯までには帰って来る」と
素っ気ない声を返してきたから
二の腕を掴んで「何時?」と問いかけた
アオシ「・・・
「・・・アタシは坊守じゃないもん…」
このお寺に来た日に
おじさんは私が「坊守」と呼ばれる事は
無いと言っていた…
「坊守」は住職の奥さんの事で…
おじさんが住職になる時には
私はこのお寺にはいないから…
アオシ「お袋の真似して
何も言わずに大人しく寺にいろ」
「・・・・・・」
何時に帰って来るか
聞いただけじゃない…
おじさんはお寺にいても
お父さんと話ていたり
お寺の方に篭ってばかりで…
居ても居なくても一緒にはいられないけれど
この敷地内に居ないと思うと
寂しく感じる…
「・・・・4時?」
炊飯器を開けてご飯をよそいだした
おじさんは何も答えてくれなくて
掴んでる腕に自分の額をペタッと当てて
おじさんの腕にしがみつく様にしていると
「はぁ…」といつも通りのタメ息が聞こえてきた
アオシ「小学生のガキじゃねぇんだから
時間の潰し方位自分で見つけろ」
おじさんの言葉にムッとして
腕から離れるとバシッと音が鳴る位に
おじさんの二の腕を叩いて…
「もう帰って来なくていい」と言って
4人で食事を摂る時も
おじさんの顔を見ずに黙々と食事をして
お父さんとおじさんが出掛ける時も
台所で洗い物をして見送りに行かなかった…
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