〈ユメノ視点〉








「あっ!」





何となく下着の気持ち悪さを感じ

トイレに小走りで向かうと

思った通りに下着が赤いシミを作っていて

「そうだった…」と呟き






桔平の部屋に置いてあった

生理用品を回収しようとトイレの棚を開け

伸ばした手を止めた事を思い出した






「・・・はぁ…持ってくれば良かった…」






仮にも…

他人のトイレにあった物を持ち出すのが

何となく…衛生的に…嫌な気がして

「向こうで買えばいっか」と言って

トイレから出て行ったから

私の荷物に生理用品は無く…

お母さんも持っているとは思えない





「・・・・夕方前だろうし…」






おじさんに頼もうかとも思ったけれど

帰りは夕飯前だと言っていたし

それまでに出血の量が増えてもなと考えて

自分の部屋に戻りコートを手に取って

「緊急事態だししょうがないわよね」と言って

口の端を上げて笑うと財布とスマホを

バックに放り投げて誰もいない家の廊下を

足音を立てない様にソッと歩いた






「お父さん達はお客様の相手してるし

  お寺には近づいちゃダメだし…

  しょうがない、しょうがない!笑」







小声で「言ってきます」と囁いてから

靴を履いてウキウキ気分で

裏側の出口から出て行き坂道を降りて行った






「とりあえずナビを…」






少し離れた所で

スマホを取り出して周りにコンビニや

スーパーがないか検索してみると

有名どころのコンビニやドラッグストアは

ヒットせずにマイナーな名前のお店が見つかった






「Kショップ?…なにそれ…」






ここから5キロ程離れた場所に

あるそのお店に「5キロ」と呟いて

バスか何かないのかと検索するけれども…





( ・・・バスも無いの? )





バスのマークを押しても

あり得ない到着時間が表記され

タメ息を溢して自分の足元に目を向けた







「スニーカーにすれば良かった…」







履いて来たブーツのカカトに

往復10キロも歩くのかと思うと

頭が痛くなったけれど…





振り返って少し見えるお寺の影を目にし

やっと抜け出せた喜びもあり

「よしっ!」と気合いを入れて

スマホの画面に目線を落とし

「コーヒーと…」と買いたい物を

頭の中で整理しながら歩いた












  



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