外に…

〈ユメノ視点〉







 



父「今日は母屋の掃除をしていなさい」






お寺の石階段でもホウキではわこうかと思っていると

おじさんのお父さんからそう言われて

「またぁ…」と小さく呟いた…





お父さんは…

と言うか、お母さんも皆んな

私を外に出そうとしないし

お寺に来客予定なんかがあると

こうして家に閉じ込めようとする…






( ・・・まるで隠してるみたい… )






何気なく顔を横に向けると

古い掛け時計が目に入り

ハッとしてお父さんに背を向けて

パタパタと小走りで

おじさんの部屋へと向かい

年期の入った襖扉をパシッと

勢いよくスライドさせると

袈裟を着たおじさんが目の前に立っていた






「良かった!まだいたんだ!」






おじさんは檀家さんとか言う

お得意さんの家に行くと行っていたから

出掛ける前におじさんの姿が見たくなった






アオシ「・・・足音立てて走るな」






「お寺じゃないんだからいいじゃない…

 ねっ!何時に帰って来るの?」






おじさんの長い袈裟の袖を掴んで

そう問いかけると

おじさんは分かりやすく位に

面倒くさそうな目を私に向けてきて

「夕飯までには戻る」と言うから

「遠いの?」と問いかけた






アオシ「寄る所があるんだよ

  それよりも、掃除しろって言われたんじゃねぇのか」






おじさんの言葉にムッとして

掴んでる袖をグイッと引っ張りながら

「いつになったら人前に出れるの?」と

怒った口調で言うと

おじさんは顔を反らして「さぁな」とだけ答えた






( ・・・なによ! )







お見合いが嫌だからと

私をこんな所に連れて来た癖に

誰にも会わせようとしないし

町の人に紹介もしてくれない…






「買い物だって行きたいんだけど」






アオシ「お袋が買って来るだろうが」






「お菓子とかコーヒーよ!

 お母さんに頼んだら

 また何か言われるに決まってるし…」






戸棚にあったスティックコーヒーを何回か

勝手に飲んでいたら

お客様用だと小言を言われたから

自分が飲む用の…

自分の為のコーヒーを買いに行きたかった…





( ・・・それに…スティックは… )





いつもはドリップ式のコーヒーを飲んでいたから

スティックのコーヒーだと…

なんて言うか…美味しくない…






「とにかく!

 自分の物だって色々と買いたいから

 私も一緒に連れて行ってよ!」






アオシ「・・・・菓子に…コーヒーをか?」






「囚人じゃないんだから

 好きな物くらい買って食べさせてよね!」






娯楽も何もない此処は

まるで牢屋の中で…

せめてコーヒーを飲んで一息吐く時間が欲しい…






「一緒に行く!」





アオシ「連れて行けるわけねぇだろ」





「じゃーお店の場所だけでも教えてよ」






暇な時間だけは沢山あるから

歩いてでも買い物に行ってやると思っていると

「掃除してろ」と言われ

掴んでいた手を離された…






















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