終わる縁…

〈ユメノ視点〉










キッペイ「そうか…」






部屋を出ると桔平に伝えると

「何で」や「ダメだ」と引き留めらる事はなく…

返ってきた言葉は「そうか…」の一言と

気まずそうに下げた表情だけだった…





「・・・アタシ達1年経って

  なんか…ほら!マンネリっていうか…

  お互いまだ若いし新しい相手探した方がいいよね」






まるでアラサー夫婦が離婚でも

するかの様な台詞を話している自分に

何言ってるんだろうと思いながらも

「あなたの浮気に気付いてました」

なんて事も言えない

地味なプライドを抱きしている

24歳の自分がとても惨めで…

可哀想に感じた…






「新しい部屋も契約してて

  今週末には出て行くから…」





キッペイ「・・・うん…分かった」






そう言って顔を上げた桔平の顔は

困った様に少しだけ笑っていて

「荷物運ぶのとかあれば言えよ」と

彼なりの最後の優しさを見せてくれた…





( ・・・こんな…顔だったっけ… )






あまり顔を合わせなくなっていたせいか

桔平のクリクリとした

丸い目を見て話すのは久しぶりで…




おじさんの言っていた通り…

アタシにも何か落ち度があって

桔平は浮気を始めたのかなと

初めて占いや前世なんかの所為にせずに

今回の別れについて考えた…





ソファーで眠る桔平に

「おやすみ」と伝えて

寝室のベッドに体を沈ませながら

閉じる瞼の裏側で

あの日のキスを思い出していた…






( ・・・応えてはくれた… )






一方的なキスになるだろうと重ねた唇は

私の予想をいい意味で裏切り

おじさんは…熱く応えてくれ…




おじさんの胸ポケットにある

スマホが鳴り響くまで

私達はリップ音だけが聞こえる

あのベンチの上で苦い味のキスを

何度も何度も…繰り返していた…






( ・・・いいと思っていた… )






頭まで毛布の中へと潜らせて

身体をギュッと小さく丸めたまま

自分の唇に手を当てて

あの日…ホテルに行ってもいいと思っていた

自分に「はぁ…」と息を溢し…





手で撫でている自分の唇には

おじさんとのキスの感触しか思い出せず

後藤君や神宮寺先輩との感触は

全く残っていなかった…





「・・・気不味いけど…気にならないし… 」





あのキスの翌日に

会社で先輩と会っても

私の頭の中はおじさんとのキスでいっぱいで

変に意識する事もなかったし

家電品は友達から貰える事になりましたからと

伝えて少し距離を置いている





60%の相手だったとしても

ドラマの様な大恋愛をする事はなく…

まるで脇役の脇役…の様に

軽く扱われて終わりになる所だった…






( ・・・おじさんとの糸…見てもらおうかな… )






懲りもせずに占いに頼ろうとしている自分に

馬鹿だなと呆れながらも

おじさんと自分の薬指には

赤い糸が光っている様な気がしていた…












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る