〈ユメノ視点〉










マモル「この物件だったら

   直ぐにでも入居の手続きができるし

   初期費用もおさえられるよ」






「ここが?」






後藤君の連れてきてくれたマンションは

駅からも近く綺麗な1LDKで

敷金だけでなく礼金も取られそうな

物件に見える…






マモル「ちょっとだけ頑張ってみたよ!笑」






後藤君の言葉の意味を理解して

不動産屋の知り合いや彼氏がいると

こんな特典があるんだろうなと

考えながら部屋を見て周り

その日のうちに新しい部屋の契約をした






マモル「2週間後には鍵も渡せるから

   荷造りも早めに初めてた方がいいよ」






「うん、ありがとう」






書類を持ってお店を出ようとすると

「19時には終わるから」と

小声で言われ「分かった」と頷いてから

後少しどこで時間を潰そうかなと考えた





( ・・・あと2週間か… )






桔平との生活も後少しで終わるのかと

思いながら近くのバーガーショップに入り

お手軽なコーヒーを一杯注文してから

空いている窓際の席に腰を降ろした




後藤君の話し方や…

見送る時に私の肩に置かれた手は

明らかにそう言う感じで…





「・・・付き合うのかな… 」





この後に行く予定の食事は

デートみたいなものだろうし

何も問題がなければ

2週間後の桔平と別れた日には

後藤君の彼女になって

あの部屋で彼と過ごすような気がしていた…





( ・・・・・・ )





何故だか分からないけれど

イマイチ気分は乗らないし

後藤君と付き合っても長くは続かない気もした…






「・・・初期費用もサービスしてもらったしな…」






正直…まずかったかな…

と心配している部分があった…




住んでる場所も部屋も…勤め先も…

全部が丸わかりな状態だし

あなたとはやっぱり付き合えませんと

なった時に「はい、わかりました」と

アッサリ引いてくれるのかな…

と不安になったからだ…





「・・・・・・」





そう思いながらも

別の相手のいる桔平と住み続けるのも嫌だし…

何とかなるかなと安易な事を考えたまま

ガラスの向こうを歩く通行に目を向けていた





歩いて行く人々を

ただ何となく眺めているわけじゃなく

自分の目はしっかりと通行人達に向けられていて

誰かを…探しているんだと

自分でも分かっていた…






「明日は仕事?」





アオシ「さぁな…」





「土日休みじゃないの?」





アオシ「俺たちに土日は関係ねぇからな…」






おじさんの事で知っているのは

年齢と…下の名前だけで…

あとは何も知らない…





( ・・・・何の仕事なんだろ… )






この日…後藤君と食事に行き

お互いの今までの恋愛話しや

趣味などについて話したりして

少しずつ近づく距離に

小さな戸惑いを感じながらも

帰り際に彼が寄せてきた顔を

拒む事が出来ずに…キスを受け入れた…




付き合う前にキスをする事だってある…

流れや雰囲気で…




そこから付き合う事だってあるし

やっぱり違うかなと

何もなかった様に離れる事だってある…





心から好きじゃなくても

こんな…その場凌ぎのキスだって…

今までにだってあった筈なのに…





( ・・・・嫌だな… )






無性に…嫌だと感じて

触れ合っている唇にも…

後藤君にも…私自身にも…

嫌気を感じたキスだった…





それが、桔平への後ろめたさなんかじゃなく

誰のせいでそう感じているのかも

分かりながら…キスを続けていた…














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