運命を…

〈ユメノ視点〉









ケンタロウ「遊園地とか久しぶりだな」





「アタシも…かな?笑」






麻梨子からの友達伝いで紹介された健太郎君と

遊園地に来てみたけれど…






ケンタロウ「あっ!アレも乗りたいね…ヌリヌリ…

    お土産は帰りに見ようか…ヌリヌリ…」





「・・・・・・」






桔平はついに1週間出張で家を空ける様になり

麻梨子から紹介された健太郎君と

デートの様な事をしていても

後ろめたさは全くないけれど…






( ・・・何回目… )






マリコ「もうダラダラとLINEしてもしょうがないし

   パッと会ってダメなら次だよ!

   沢山の糸から引っ張られてるんでしょ?

   健太郎君がその一本かもしれないじゃん」






麻梨子からのアドバイスをうけ

紹介をされた週末には遊園地に来てみたけれど…

駅で待ち合わせをしてここに来るまでの間に

彼がポケットからリップを取り出して

唇に塗っている姿を見るのは5回目だ…





( もう十分潤ってるじゃん… )





麻梨子の言う通り顔は良いけど

ピンク色に染まったプルプルの唇を見ていると

軽く鳥肌がたってくる…





マリコ「3つよ!!イヤな所があっても

   3つは目を瞑って耐えなきゃ

   結婚なんて絶対に無理よ!!」






( ・・とりあえずあと2つは我慢しなきゃ… )






乗り物に乗る時には手を差し出してくれるし

レディーファーストもそこそこOKだし…






ケンタロウ「ふぅーちょっと休憩しようか…ヌリヌリ」






「・・・・・・」






リップの消費量どの位なんだろうと

失礼な事を考えながら隣を歩いていると

「あっ!」と声を上げて立ち止まり

「トイレ行ってきていい?」と

ベンチに座って待っているように言われ

頷いてベンチに腰を降ろしたけれど…





( ・・・アタシも行っておこうかな )





また数十分経って行くのも

タイミングが悪いかなと思い

健太郎君の後を追っていくと

トイレに行った筈の健太郎君は

トイレの入り口横に立って誰かと電話をしていた





ケンタロウ「ん……でも、気になるんだよなぁ…」






( ・・・・なに…なんの話? )






ケンタロウ「顔はまぁ良いけど…

    だって唇がちょっと…

    リップぐらい塗りなおせよなぁ…」






「・・・・・・」






ケンタロウ「でも会った初日に

    リップをプレゼントなんていいのか?笑」






( いいわけないじゃん! )





健太郎君が私の唇に不満があるんだと分かり

バックから手鏡を取り出して見てみても

皮も剥けていないしカサついてもいなかった…





( どんな唇なら満足なのよッ! )





聞こえてくる会話にイライラは募っていき

「ふざけんじゃないわよ」と言って

踵を返してスタスタと早足に遊園地から出て行った






「なっにが塗りなおせよ!

  アンタこそテカリ過ぎなんだから

  ティッシュで拭き取りなさいよね…」





イライラとしながら

大きめの独り言を言い駅に歩いて行くと

目の前から桔平が歩いて来る姿を見つけ

慌てて自販機の横に隠れた…






( ・・・・ずいぶんと楽しそうな出張ね… )






桔平の隣りには一緒に写っていた

あの女の子が歩いていて

仲良く腕を組んでいる…






「・・・・前世の縁は終わって

  さっさっと新しい糸の相手を見つけたのね」






二人の左手をジッと見て

何%の相手なんだろうと

自分には関係のない糸について

考えているのがバカらしく感じ

「何が運命よ」と小さく呟いて

駅に背を向けてトボトボと歩きだした





お昼過ぎにあった太陽は

だいぶ低く下がって来ていて

自分が歩いているのは

1〜2時間程度じゃないんだと思い

「はぁ…」とタメ息をついて

パンパンになっている自分の足に

目を向けて見るけど

不思議と疲れも痛みも感じなかった…





( ・・・運命って… )





「ロマンチックだけど残酷だよね…」





パーセンテージがあるなんて

知りたくなったし

いかに高い数字だったとしても

100%の相手じゃなければ

頑張れないし意味がない様な気がした…






「60%も稀なのに…

 100%の相手に会える人なんて

 世界中に何人いるんだろう…」







途中からバスに乗って帰り

日も落ちた空の下を歩きながら

あの誰もいない部屋に帰るのが

何となく寂しく感じ足を止めて

ある場所へと向かって足を進めた…





( イヤな縁でもいいからいてよね… )





と小さな期待を込めて扉を開けると

まだ開店して30分も経っていない店内には

バーテンダーのお兄さん達しかいなくて

「いるわけないか…」と呟くと…






アオシ「またお前か…」






後ろから聞こえてきた声にパッと顔を向けると

数秒前に期待を込めた顔が見えた…






「・・・・・・」





アオシ「・・・おい…」





「・・・・・・」





アオシ「はぁ…入らねーなら退けよ」





「・・・おじさん…名前なに?」





アオシ「ハッ?」





「名前!なに!?」






何となくだけど…

目の前で眉間にシワを寄せて

面倒くさいという目で私を見ている

このおじさんに運命を感じた気がした…






( この人の事が…知りたい… )










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