細目

〈ユメノ視点〉









トオル「八重桜!悪いけどコピー頼めるか?」





「はい、大丈夫です」






神宮寺先輩から書類を受け取り

コピー機を作動させながら

チラッと先輩を盗み見ると

デスクに備え付けられている電話で

取引先と話をしている先輩の顔は少し歪んでいて

何かトラブルでもあったのかなと思う反面…





( ・・・なんか…エッチくさいな… )





シワの寄った眉間を

自分の人差し指で撫でながら

何かを考えている先輩はカッコ良くて…

見てるコッチがなんか…

変な気分になってくる…





「顔はいいしなぁ…」





入社したばっかりの時は

先輩を見てドキッとしていたけれど…





( ・・・会社はなぁ… )





ハッキリ言って

会社とプライベートは

キッチリと分けたい派だから

どんなにカッコ良くても対象外として見ていた…





喧嘩したり別れたりなんかした時に面倒だしと

首を小さく振り「ダメかな」と小さく呟くと…





ミナミ「いつまでコピーしてるつもり?」





右後ろから聞こえてきた声に「ひっ」と

肩を上げてパッと振り返ると

私の指導係の美南さんが腕を組んで立っていた





「お疲れ様です、もう終わりますから」





そう言ってコピーされて出てきた書類を手に取って

「どうぞ」とその場を離れようとすると

「八重桜さん」と呼ばれ

イヤイヤながら「はい?」と

呼んでいる美南さんの元へと歩いていくと

「原本忘れてるわよ」と神宮寺先輩から

渡された書類を差し出され

「あぁ…すみません」と頭を下げると






ミナミ「神宮寺先輩に見惚れていないで

   しっかり仕事しなさいよね」






「・・・・見惚れていたわけじゃ」






そう言いかけると

スッと細くなった目で睨まれ

「ありがとうございます」と言って

原本を受け取り神宮寺先輩に

コピーした分と一緒に手渡して

自分の席に座って「はぁ…」と

疲れたタメ息を溢し

中々近づく事の出来ない60%の相手に

どうしようかと考えた…





「・・・・・・」





ファイルを取る振りをしながら

また先輩に目を向け

程よく色のついた男らしい手や

浮きあがっている血管に

ヤッパリいいなと思い…




切長の少し釣り上がった目も

中々…そそられるものを感じていると

頭の中でチラチラと

ある人物の顔が浮かんできた…





( ・・・おじさんも切長の細目だったな… )





肌の色は先輩とは間反対で

女の子よりも綺麗な…白い肌をしていたし…





「スーツ姿も… 」





目線の先にいる60%の先輩よりも…

カッコ良かった…ような…気も…





( ・・・・んっ!? )





何であんな、おじさんの事なんか

思い出してんのよと

頭をぶんぶんと横に振り

「集中よ…」と言って自分の仕事を進めた










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