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〈ユメノ視点〉
「あの…カクテルありがとうございます…笑」
少しだけ頭をクイッと左に傾けて
出来る限り好印象に映る様に
照れた笑顔で挨拶をすると…
アオシ「いえ…喜んでいただけたのなら良かったです」
お兄さんはさっきの様に小さく笑って
自分の目の前にあるグラスを手に取り
「良かったら乾杯しませんか?」と
空いている左隣りの椅子を片手で少し引き
座らないかと言っているんだと分かり
「じぁ…一杯だけ」と言って
隣りの席へと腰を軽く降ろし
カツンッと小さく音を立てて乾杯し
唇を濡らす程度にカクテルを飲み
お兄さんからのアクションを待っていると…
( ・・・・んっ? )
少しの沈黙の後…
何か言ってくるのかと待っているけれど
お兄さんは前を向いたまま
何も話すことなくカクテルを飲んでいて
アレっと思いながら私も黙ってちびちびと
大人の味のするカクテルを口に運んだ
お兄さんの飲んでいるグラスの中身が無くなり
グラスをコースターの上に置くと
顔だけをコッチに向けてきて
ジッと見てきたら少しドキッとしながら
お兄さんからのアクションを待っていると
「美味しくなかった?」と私の手にある
紫色のカクテルに目線を落として聞いてきた
「いえッ!とっても美味しいです」
アオシ「そッ…なら良かった」
また顔を前に戻すのが分かり
「あの…」と私から声をかけると
戻しかけた顔をコッチに向けてきたから
「なんてカクテルなんですか?」と
中々話を続けてくれないお兄さんの代わりに
話題をふるとお兄さんは
右手を右頬に添えて頬杖をつくと
大人の余裕ある笑みを浮かべて
「君にピッタリなカクテルだよ…笑」と言った
( 私に…ピッタリ…なんだろ )
とびきりの美人とまではいかなくても
それなりに自分の見た目には
チョッピリ自信があり…
可愛い感じの意味とかあるのかなと
期待をしながら「えっ?」と問いかけると…
アオシ「パルフェタムール…」
「パル…フェタムール?」
アオシ「意味は、完全なる…愛」
「・・・ぁい…」
お兄さんと見つめ合っている目は…
自分でも熱を持っているのが分かるし
ずっと…胸の音が身体中に響いていた…
アオシ「・・・ふっ… 運命感じます?笑」
「へっ…?」
アオシ「運命って信じる?」
もうドキドキしすぎて苦しくて
口で上手く呼吸出来ているのかも疑問に
感じてながらお兄さんの目を見つめたまま
「信じてます…」と言うと
お兄さんの左手が私の方に伸びてきて…
「・・・ぎゃッ!?」
てっきり頬に添えられるかと思った
その手は私の鼻先をギュッと痛い位に摘んできて
「なっにが運命だ!バカか?」と
さっきまでとは違う話口調で言われ
顔も…眉間にシワを寄せ
細い目を釣り上げている…
アオシ「俺とお前に運命なんかあるんなら
今この店にいる全員と
運命なんてものを感じなきゃいけねぇよッ」
「分かったか」と言って摘んでいた手を
パッと話すとその手をおしぼりで拭いていて
「ちょっと!」と声を上げると
アオシ「どんだけ塗りたくってんだよ
化粧が指についたじゃねぇか」
甘い雰囲気は180度変わって
品よく見えていた顔は
目を細めて不機嫌な表情を浮かべている…
「そっ!そんなに塗ってないわよ!!
急に手なんか伸ばして気持ち悪い!
セクハラよ、おじさん!!」
アオシ「ハッ…笑
そのおじさんに運命なんてもんを感じて
ヘコヘコ近づいて来たんじゃないのか?」
「そんな物感じてないわよッ!
勝手にカクテルなんかプレゼントしてきて」
どーいうつもりよと文句を言おうと
人差し指をビシッと向けると
「うっせーからだよッ」と言われ
「うっ…うるさい?」と問いかけた…
アオシ「運命だの前世だの占いだの…
上手くいかねぇ恋愛を全部
そんなもんのせいにしやがって
お前に問題があるんだから
くだらねぇ所に通ってないで
自分磨きでもしろよな」
「盗み聞きしてたの!?最低…」
アオシ「そんな事しなくても
お前の彼氏が浮気してる話なら
店にいる奴皆んな知ってるとおもうぞ」
「えっ…」と顔を後ろに向けると
店内にいる人…全員がコッチを見ていた…
アオシ「ゆっくり飲みてぇのに
同じ事をグルグルとでけぇ声で話して
最後には運命の相手がどこにいるか
探してもらうだと?
お前には意思がないのかッ?」
「あるわよ!!
早く運命の相手を見つけて幸せになりたいのよ」
アオシ「結婚考えてた相手を
今日初めてあった占いババアに
ちげぇって言われればアッサリと
別れようとしたり…バカかお前は?」
「・・・ッ・・なによッ!!」
バックを手に持ち
半分近く残ってるカクテルを
お兄さんの前に置いて
「花の香りのするお酒は苦手なのよ!」と
フンッと鼻息を荒くして文句を
言ってからバーを逃げる様に飛び出した
「なによ…何なのよ!!」
文句を言いながらバックから
スマホを取り出して
さっき帰った麻梨子に電話をしようと
LINEを開くと【頑張って♡】と届いていて
その下には帰りの遅い私に桔平から
心配をしているLINEが届いていたけど…
「・・・・なにが前世よ…」
そう口にしながらも
桔平に対しての想いが今日一日で
だいぶ薄れているのも事実で
麻梨子の部屋に泊まると返事を返して
自分のマンションに帰って行った
麻梨子を追う為にタクシーを捕まえた
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