第3話『反抗期』

 「入院生活はどうなの?」

 「うん、何とかやってるよ」

 「何か足りないものがあったら何でも言ってくれよ、揃えてやるからな」

 「ありがとう」

 「それで、行方不明になってる間のことは思い出したの?」

 「うん、手嶌先生と話す中で、何となく思い出してきた」

 「もうこんなこと起こさないでよね。捜索願いも出したし、とっても心配したんだから」

 「本当にそう思ってる?」

 「心配したに決まってるじゃない」

 「質問を変えようか。何で隼人を産んだの?」

 「何でって…」

 「僕じゃ不十分だったの?お父さんと血が繋がってないから?」

 「そんなこと思ってないわよ」

 「いーや、思ってる。僕は神田家の本当の子供じゃないんだ。再婚して、隼人が生まれて、家族みんなが喜んだ。みんな隼人を溺愛した。僕は?僕は要らなくなったの?いっそのこと、死んだら良かったの?」

 「そんなこと言うもんじゃありません!」

 「僕がこんなことになったのは、お前らのせいだからな。絶対に許さないからな」


 自分でもびっくりした。

 面会に来た両親を前に、僕が今まで抱えてきた、言わずに飲み込んできた言葉がするすると出てきた。

 そうか、僕は弟に嫉妬してたんだ。

 家族みんなが弟の方しか向いていない。

 僕は家族と一緒に居ても、常に一人だった。

 寂しかったのか。

 それで、家を出て大学の寮で一人暮らしを始めたのか。

 家に居場所が無かったから。

 色んなことが整理されてきた。

 やっぱり入院して良かった。

 自分の人生を振り返るって、こんなに大事なことだったんだ。

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