第2話 出会い
アルマ達に俗に言う追放、というのもされて早二日。
この二日間、僕は何も出来なかった。
なにせ僕が生きてきたこの十四年間、小さい頃から仲が良くもう十年ほどの付き合いになっているのだ。
特に冒険者として活動してきたこの二年間は更に濃い日々を送っていたし、アルマもランドルフもリィネもユナも大切な存在になっているのは間違いない。
だからこそ力になれなかったのは嫌だったし、追放されたのも泣きじゃくるほどに悲しかった。
事実、あの後すぐに宿にこもって何にもやる気が出なかった。
流石にずっと籠るのは不可能なので二年間で貯まったお金を少し持って買い物に来ているということだ。
街の市場で食料品や冒険者としての必需品を買い終わり宿に帰っている途中、一つの屋台が目についた。
その屋台は鳥肉を串焼きにして売っているもので、幼馴染達とよく食べていたものだ。
駆け出しの頃は特に、依頼を達成した際の少ない報酬を分け合ってみんなで食べていた思い出深い屋台だ。
この店の看板メニューであるタレ串焼きを一本注文
し、屋台のすぐ側にある木製のベンチに腰を下ろす。
少しすると肉が焼ける音が聞こえ、タレが焦げる香ばしい匂いもしてきた。
「へい兄ちゃん!タレ串焼き一本!」
店主の威勢の良い声が聞こえた。
ベンチから立ち上がりそのまま数歩歩く。
「ありがとうございます」
店主に小銅貨を数枚渡しタレの香ばしい匂いが癖になる串焼きを一本貰う。
そのまま広場の中央にある噴水のちかくのベンチに腰を下ろす。
「はぁ...これからどうしようかな...」
魔法使い一人だけで冒険など危険がありすぎる。
剣士などの前衛ができ、ある程度の魔法が使えるなどの回復手段が確保できる者は一人でも冒険することができるが、魔法使いだけでは接近された時の勝率が低すぎる。
そのため、魔法使いは基本的にパーティーに入り連携をすることがこの世界の常識なのだ。
しかし僕はパーティーを追放された身。
今更剣士に転職なども無理だろうし、一人で冒険なんて僕には無理だろう。
パーティーに入ろうとしたって初級魔法しか使えない魔法使いを入れたいなんて物好きなんていないだろうし、僕の冒険者としての人生はもう終わってしまうのかもしれない。
そんなこんなで僕はこれからの人生を憂いていると、
いきなり僕の視界が薄暗くなった。
今は昼過ぎで、座っている席も日当たりのいいところなので暗くなるというのはおかしいはずなのだが。
そう思って顔を上げると、長く美しい金髪を持つ女の子が僕の前に立っていた。
「あなた、浮かない顔してどうしたのよ?」
そうして女の子が僕の視線に合わせるようにしゃがみ込む。
普段ならなんだこの人で済ませるような出来事。
だけど、僕は不思議とこの人の目に吸い寄せられた。
この人の目に、何か表せないものを感じたのだ。
「ちょっと!何か言いなさいよ!!」
「あ、ごめんなさい。これからどうしようかと考えていたもので...」
「これから?どういうこと?」
そういって金髪ロングの女性にここ数日間にあった出来事を簡潔に説明した。
話を聞き終わった女性は目を瞑り何かを考えているようだった。
「...そういうこと。なら、私と一緒にパーティーをくみなさい!」
「え...?でも、僕は初級魔法しか使えないんですよ?」
「それがどうしたのよ。あなたはもっと強くなるかもしれないのに。自分の可能性を自分が切り捨てるなんて一番悲しいことだわ」
女の子の言葉に泣きそうになった。
強くなれない自分が嫌だった。信頼していた仲間とも別れてしまった。
だけど、この女の子は受け入れてくれた。
受け入れられる、そんなことがこんなにも温かいものだなんて。
「...ありがとうございます。これからよろしくお願いします...」
泣きながらそう口にすると、女の子はたどたどしながらも答えてくれた。
「ちょ、ちょっと!!泣くことはないじゃない!!...まぁいいわ!私はネルディーナ。あなたの名前は?」
「僕はカーク。君のこと、ネルって呼んでもいいかな?」
僕がそう言うと、ネルディーナは少しきょとんとしたあと、顔を赤くした。
「いきなり何を言うの...!?で、でも呼んでくれて、構わないわ...!!」
「ありがとう。これからよろしくね、ネル」
こうして、ネルと僕の目まぐるしい冒険が始まったのだった。
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