初級を極める魔法使い〜追放されたけど、基本を極めて頑張ります〜
すうぃりーむ
第1話 プロローグ
「カーク。お前はもうパーティーには必要ない」
朝方から取り組んでいた依頼が終わり、昼食をパーティーメンバーで取っていたとき、いきなりリーダーであり幼馴染でもあるアルマからそう言われた。
僕たちは五人の幼馴染パーティーであり、パーティーの中で最年少の僕が冒険者登録のできる十二歳になった時から活動してきた。
「え...?なんで...?」
僕がそう声を出すと、呆れた、というようにアルマは首を横に振った。
「決まってるだろ。足を引っ張ってるんだよ。俺らはこの二年間でB級魔物にも戦えるようになった。だけど、お前はどうだ?この二年間、初級魔法以外に魔法を使えるようになったか?」
そうだ。
僕は魔法使いを目指している。
魔力量は人より遥かに多いという才能はあった。
だけど、魔法を使うという才能には全然恵まれなかった。
そのせいか、この二年間初級魔法しか使えなかったのだ。
アルマなどはもう先頭に立って魔物達と戦えるほど強くなっているというのに。
「そ...それは。でも、まだ強くなれるかもだし...」
僕がオドオドしながら最後の方には全然聞こえないような弱々しい声を出すと、アルマは持っていたコップを木のテーブルに叩きつけた。
「もう二年も経ってんだよ。お前はもうソロで活動いけよ。俺達とは分かれるべきだ」
昼間の賑わう時間ということもあってか、周りの人も僕たちのテーブルに視線を向けていた。
それを感じ取ってか、僕と同じ魔法使い、ただし支援を主とする幼馴染のリィネが声を出した。
「ちょっと、アルマ。今は昼過ぎでここはお店よ。それに、カークに言い過ぎだわ。もう少し言い方もあるでしょう」
リィネの言葉にガタイの良さを生かし、タンクとしても前衛としての役割も果たすランドルフが話し始める。
「確かに言い過ぎかもしれねえ。だが、アルマが言ったことも事実。足を引っ張っているんだ。ソロで活動してみるのも手だろうな」
「そうかもねぇ〜。それに、私達も魔物討伐の依頼も増えてきてるし、カークを危険に晒すだけになるかもしれないよ〜?」
このパーティー最後の一人、ユナがのらりくらりとしている特徴的な声で話し始める。
確かにみんなの言う通りだ。
みんなは強くなってるのに、僕だけは強くなれないという悩みは前々から持っていた。
いつも迷惑をかけてしまっているし、そろそろ抜けるべきか、と考えていたし、今がその時なのかもしれない。
「...わかった。確かに僕が迷惑をかけていたのは事実だ。僕も、もう抜けた方がいいってずっと思ってた。だから、みんなのために抜けるよ。今まで、ありがとう」
「あ...ちょ、ちょっと!!」
リィネの呼びかけにも応じず、食べかけの料理を残し立ち上がる。
自分の分のお金を机の上に丁寧に置き、お店の出入り口まで早歩きで向かう。
ドアを開ける時に、石でできた床が少しだけ黒く染まった。
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