第15話

コーヒーを一口飲んで、さあ優斗さんにメッセージを送ろうとスマホを鞄から取り出している時だった。



「理絵さぁん」



私は咄嗟に笑顔を作り後ろに振り返る。



「真由おはよう」



彼女のことは嫌いではないが、まぁなんとタイミングの悪い。



私の座っている隣の席は空いていなかったものだから、真由は中腰になり、小声で話し始めた。



「おはよー、私結構前からここに居て陸たちの会話聞いてたんだけど陸メジャーデビューすることが決まったんだって!トキメキの主題歌に決まったらしいよ」



「えー!」



予想もしていなかった情報に思いのほか大声が出てしまった口を私は慌てて自身の手で塞いだ。



隣に座っている若そうな男子がチラッとこちらを見た。



トキメキ、あの人気の恋愛バラエティの主題歌に陸の声が毎週流れると言うの!?



この一年間で同期は三人にまで減った。

私、真由、そして陸だ。



入社してすぐの頃は皆でも、二人でも遊んだり飲みに行ったりしていたが、最近では職場で会った時に二言三言会話を交わす程度になっている。



バンド活動をしていると最初の自己紹介で言っていたがこの大都会東京ではそんな人間腐るほど居るから気にも止めていなかった。



「すごいね、陸狙っとけば良かったかなぁ」

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