第12話
メイクは一時間もあれば仕上がるけれど、そのあとで落とすのも面倒くさいし、自撮りなんていつぶりか分からないから、最高の一枚が撮れるまでどのくらい時間が掛かるものか。
そんなことを考えているものだから眠れずに、私はうっすらと目を開け寝返りを打った。
淡いピンクのチェック柄が視界に入る。
元々はもっと濃いピンクだったように思う。
というか確実にそうだ。
長年の使用ですっかり色褪せてしまった。
どのくらいの色の濃さだったかはもう忘れてしまった。
この掛け布団は十八歳で上京した時に最寄り駅を降りてすぐにある量販店で母に買って貰ったものだ。
嬉しい時も悲しい時も、眠りにつく時は十七年間ずっとこの布団に包まれてきた。
思い出がたくさん詰まった、もう相棒に近い。
いつか破れてボロボロになって役目を果たせなくなった時でも、その切れ端を大事に額の中に入れて部屋に飾ろうと思うくらいに。
十八歳の私が今の私を見たらどう思うだろう。
なんて言うかな。
考えるまでもなくきっと絶句だ。
悲しくて情けなくてシクシク泣いてしまうかもしれい。
私は現実から目を逸らすように目を閉じると、眠りにつくことに集中した。
次の日の朝の目覚めはいつもよりスッキリとしていた。
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