第12話 宿主体
美味しい食事を取り終わって皆でお茶を飲んでくつろいでいるとバズがおもむろに話しかけて来た。
「おい、ハーロック。そんだけ食べられるんならもう調子は良いようだな。
お前のお力のくわしい事が分かる資料だが裏の物置にある資料室の机の上にまとめて置いといたぞ。鍵を渡しとくから好きに見ろよ。良く調べてお力を上手く使える様になれよ。期待してるんだからな。」
「あらあら、別にそんなに頑張り過ぎなくてもいいわよ。今も特に困っていないんだから。ハーロックさんの好きにしなさい。」
「そうよね。ハーちゃんは好きな事をやればいいわよ。まだまだ父さんが頑張れば良いんだから。」
ママンと姉さんがバズが言って来た事からかばってくれたが、スキルの詳細を調べるのは自分でもやりたい事なので、やんわりとお礼を言ってことわっておく。
「ありがとう、でも大丈夫だよ。どっちみちそんなに急には使いこなせないだろうからじっくりやっていくよ。父さんもそれで良いよね? 」
「まあそれもそうだな。良く調べないで失敗してもまずいからな。俺も良いお力だったからちょっとうかれていたな。
ハーロック、ぼちぼちで良いからな。でも本当に素晴らしいお力で良かったな。」
バズは酒に酔って上機嫌でしゃべっている。ここまで機嫌が良いのは久しぶりに見たな。バズも少しは心配してくれてたのかもな
俺はこんな家族に囲まれて幸せ者だとつくづく思った。
思ったが、まあそれはそれ、これはこれだ。
明日からガンガン資料を調べていくぞ。
ヘルが言うには過去の事は電子的な記録にはあまり残っていないようだからな。物理的な紙媒体になにか別の事が残っているかもしれない。ダブルチェックは大事だ。
俺はそんな可能性が結構あるんじゃないかと思っている。
さて、夕食も食べ終わったしヘルとの情報のすり合わせを続けるとしますかね。
自分の部屋に戻ってベッドに横になるとヘルが話しかけて来た。
『良いご家族ですね。うらやましいです。マ"』
ん? ヘルにもそんな感情があるのか?
『いいえ。これは定型文です。こう言う場面の時に自動的に選択されます。マ"』
何だそれ。意味あるのか?
『はい。我々ヘルプはマスターに寄りそう物ですから。マ"』
そんなもんか。まあいい。それより夕食前に言ってた話の続きをするか。
『はい。分かりました。
それではデータチップと宿主体の関係について説明を始めます。
先ずデータチップという物は現在の生体が生まれる時に一緒に生成される様に遺伝子に設定されています。
母体の中でほとんど基礎部分は出来ますが生まれてからもしばらくは宿主体が環境に適合するように必要によって様々に対応します。生まれた場所によって心肺を強化したり消化器系を強化したり移動の補助の為に四肢を強化したりと多岐に渡ります。これが魔獣の発生原因の一つですね。
人間の場合は大体が脳の電脳化に特化されるようです。いわゆるお力と呼ばれるスキルを付与する為ですね。私達ヘルプもこの付与されるスキルの範疇に含まれます。
脳の電脳化にはかなりの時間を必要とします。その間、逆に宿主体が弱体化してしまう事もありますので環境が整っていない場合には生存があやぶまれます。
この事が現在の人間の人口の減少や文明の衰退の原因にもなってしまっています。
特に総合ネットワークと接触出来ていない地域ではスキルが得られないのでデメリットしかない状態となっています。
総合ネットワークはこれをどうにかしたいと今まで色々やってきましたがあまり進展していません。
次に生体的な位置付けを説明します。
データチップは心臓のそばにありその主な動力源は血液から得られる酸素など化学物質を使用しています。他にも体温や微細な振動を使用する事もあります。
データチップの生成には各種のミネラル等を使用しておりそれを宿主体から奪ってしまわないように人間に一般的に呼ばれている魔力、すなわち空気中に浮遊して存在する微細なマイクロマシンから得ています。
このマイクロマシンは世界の何処かに複数ある総合ネットワークの拠点から今も継続して安定的に供給されていますが場所に付いては記録を喪失しており特定されておりません。
マイクロマシンには複数の種類があり内在する各種資源からデータチップが形作られています。他にも一時的なエネルギー源としても使われています。
私達ヘルプやスキルなどはデータチップ内に存在するのではありません。脳に構築された電脳空間に格納されています。
データチップと電脳間は既存の神経網とは別の経路を作って繋がっています。総合ネットワークと接続する時はデータチップが通信を行いそこを経由して電脳にて処理を行っています。
ですからスキルの使用やデータの検索等はデータチップの機能に依存していません。以前話しましたが魔獣と家畜の魔石がほとんど同じだという理由がこれになります。
大体あらかじめ伝えておきたい事はこの位ですかね。
後は電脳内に格納されたスキルの使用効率が電脳を構築した時の使用可能領域の確保量に依存するとかですがこれは分かっていてもどうする事も出来ない事なのでくわしくは良いでしょう。
まあ取り敢えずはこんな所でしょう。
結構な量説明しましたが理解できましたか?
ちょっと詰め込み過ぎましたかね?
大丈夫ですか、マスター? マ"』
あ、ああ、うん。
何とか付いて行けてると思う、多分。
『それでは今日はこれ位にしておいてまた明日からも頑張っていきましょう。
では、お休みなさいませ。マスター。マ"』
あ、ああ、うん。
お休みなさい。
なんだかうなされそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます