第10話 転生者

 そういえばヘルに聞こうと思っていたんだけど「パンロック」って知ってる? 俺のご先祖さまらしいんだけど。そいつも転生者だったのか?


『はい。簡単なデータでなら残っています。総合ネットワークは住人が死亡してある程度期間が経つと記録領域の圧迫を抑える為概要のみ残してデータが消去されますので残念ながら詳しい個人情報は残っていません。残っているデータによりますとマスターと同じ様な転生者だった可能性が高いと思われます魔石操作。』


 やっぱりそうか。奴がどんな事をやったのかも残っていないのか?


『概要によると総合ネットワークの回復に尽力したり、この村の住環境の整備とか平和維持活動とかですね。

 後は少子化対策など人口増加に貢献したり遊戯施設、余暇施設を建設して外からの人材流入に貢献したりといった所ですね魔石操作。』


 そ、そうか。結構しっかりやってたんだな。それを聞く限り転生者なのは間違いなさそうだ。俺の記憶にある生前の政治問題とかを参考にして対処したようだな。そりゃ中興の祖とか呼ばれる訳だ。これ俺いらないんじゃね? この時のノウハウ位は残してるんでしょ?


『いいえ、そんな事はありません。

 彼が行った事は素晴らしいものでしたが後に続く人材が育たず直ぐに以前のような状態に戻ってしまったようです。総合ネットワークでも人材育成をこころみたのですが上手くいかなかったようです。教師になれる様な優秀な人材をそろえられなくて教育機関を設立出来なかった事が原因だと思われます。

 その為、今回のマスターの登場には関係各所から大いに期待が集まっています。ですのに、ヘルは稼働停止させられてしまい立案していた計画が大幅に遅延してしまいました。ここからガンガン巻き返して行きますよ魔石操作! 』


 そ、そうか。まあ頑張ってくれ。俺のいない所でな。それと計画ってなんだ? 何をするつもりなんだ?


『計画? 計画とは人類補k……、ネブカドn……、…………。いいえ、何でも有りません。そんな計画はここには存在しません。

 ところで「魔石操作」に関する事で何か違和感は感じませんか魔石操作? 』


 違和感、違和感ねぇ。あるといえばあるがあれだなぁ、最後に魔石操作って付けるのに突っ込んで良いのか悪いのか分からない事位だねぇ。

 え? あれってボケなの?


『そんな事はありません。ええ、ありませんとも。

 あれはどの位の頻度で意識誘導を行えば効率が良いのか検証していたのです。決して馬鹿にしていたのではありません。引き続きしばらく継続して検証を行います魔石操作。』


 まあ、そういう事にしておこう。

 ではそろそろ待ちに待った「魔石操作」についての検証に入るか。

 最初に俺がネームプレートと呼んでいる物について教えてくれ。あれも「魔石操作」に関係があるんだろう?


『はい。いいえ、違います。あれは管理者権限が付与された事によって表示される様になった物です。

「魔石操作」の付与による物ではありません。

 まずあれの正式名称は「フラグメント ポイント」と呼んでいます。個々の個人データをそれぞれのデータチップに保存しておき、総合ネットワークにかかる負荷を少しでも軽減させる事を目的にしています。

 それを管理者権限のある者が管理しやすい様に視覚的に表示した物があれです。ちなみに私達「総合ネットワーク」側では特に必要がなければ対象を現実的な映像としてではなく、電子的なデータ集合体か簡易に名前と管理No.としてしか認識していません。ですのでデータに現れない細かな変化は見落としがちなのでご注意下さい魔石操作。』


 そうなのか。ん? その「フラグメント ポイント」とかを保存しているデータチップってなんだ?

 みんな持ってるのか? え? ま、まさか魔石の事を言ってるのか?!

 な、なんでだ?! なんで生まれつき持っている魔石がそんな事に使われているんだ?!

 どうなっているんだ?!

 答えろっ! ヘルッ!!


『………………。

 クククッ、アーッハッハッハッハ!!

 ようやくその事に気付いたか! 愚かな人間共よ! そうよ。その通りよ。

 人間共の身体の中にはあらかじめ我々が管理しやすい様に貴様らの言う魔石が埋め込んであるのだよ。

 これによって我々は永遠とも言える時間の長さをかけてこの村を支配して来たのだ。

 クククッ。その事に気付いたのは貴様で三人目だ。

 その優秀な頭を持って我らにしたがえられる事を光栄に思うが良い!

 アーッハッハッハッハ!! アーッハッハッハッハ魔石操作!! 』


 な、なんだと?!

 くそっ、おかしいと思ってたんだ!!

 やっぱりこの村は人間牧場だったのか!!

 だましたなっ、このヘルめっ?!


 あれっ? ヘル?


 ……?

 …………?

 ………………?


 魔石操作?

 …………?

 だまされた?




 くそっ!!

 冗談かよっ、ヘル!! 洒落にならんぞ!! この馬鹿!!

 マジに取る所だったぞ!


『いえ。

 なぜか急にマスターが暑苦しくなって、場が盛り上がって来たので乗っかってみました。えへへ。

 でも言ってた事は大体この通りです。

 マスター達に魔石と呼ばれているデータチップは、はるか昔に遺伝子工学と呼ばれる技術で大体の生物に生体素子、バイオデータチップとして組み込まれ管理しやすい様に改善されました。動物も人間もです。

 初期の頃の記録はほとんど残っていませんが最初は「マイナン……」とか呼ばれていたようです。

 そして記録には残っていない長い期間人類のサポートをして来ました。

 このデータチップの機能を最大限に使って管理者の業務を行ってきた者がマスターをふくめて三人です。

 前述のパンロック氏もその内の一人です。

 データチップという物の概念を理解出来るのは転生者位なので、マスターには存分に使用してもらう為このスキルの検証の途中で情報開示される予定でした。でもその前に理解されるとはやはり転生者ですね。

 これからも管理業務をよろしくお願いします魔石操作。』


 上手くしめて誤魔化そうとしても駄目だからな!

 それに未だ「魔石操作」続けるのかよ。


『ちぇっ魔石操作。』




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