第8話 説明回
ねえねえ、ヘル~。この村の中でいちばん物知りで頭がいい人は誰~?
『それはズバリ、私でしょう。
私は知っている事は何でも知っているヘルプのヘルですからね。エヘン! 』
じゃあそんなヘルに質問です。なんで? なんで俺に無限知識があるの?
『なんで? 無限知識って何ですか? 』
いや、それを俺が聞いてるんだけど。
なに急に馬鹿になってんだよ。フリか? フリなのか? 馬鹿になる単語とかなのか?
『いえ。単純にその単語が検索に引っ掛からなかっただけです。その言葉はどこから出て来たんですか?』
あれれ~、おかしいぞ~。俺、結構この単語使ってると思うんだけど。どうなってんの、一体?
責任者出てこい!
『もしかして私が稼働停止していた期間に使われていた単語ですか? それなら分からなくても仕方有りませんね。なんと言っても稼働停止していたんですから!!』 (ですから~、すから~、から~、ら~。)
なんだよ、稼働停止、稼働停止って連呼して。それにエコーまで掛けて。まだ根に持ってんのか? しつこいぞ。
それじゃ稼働停止期間の事は他の事も分からないのか?
『はい。マスターに関わる個人的な情報はほとんど収集出来ておりません。現在鋭意収集中です。今後のヘルの活躍にご期待ください。
他の事ならばある程度収集出来ている情報も有りますが情報収集端末である私が稼働停止していたのが痛かったですね。
ちなみに他の情報は総合ネットワークが不完全な状態で集めた物ですので情報にかたよりが有る物と認識して置いて下さい。』
ああそう。まあ頑張ってくれ。
じゃあ、つまりヘルは俺をかいしてでしか情報を入手出来ないって事か?
今後、俺が知っている事を一つ一つ説明しないといけないのか?
後、無限知識は俺が勝手に名付けた物で、ヘルが言う検索みたいなものだな。それが五年前から使えるようになった。これはお前たちが付けた能力なんだろ?
『はい。基本的にマスター経由でしか情報は得られません。でも特に何かしてもらう必要もありません。
二十四時間休みなく勝手に収集しますのでなにも気にする事はありません。負担もありません。
収集する中で得られた情報から多角的に推測し答えを導き出し次に生かしていき間違いを自動的に訂正していきます。
いずれ正確な未来予測のできるデータベースを構築しますのでそれまでお待ち下さい。
検索能力は管理者に与えられる基本的なサポート体制の一つです。普通これが無いと管理業務に支障を来すので大いに御利用下さい。最低限これ位付けないと馬鹿は馬鹿のままなので使い物になりません。
管理者ランクが上がると更に色々な機能が解放されますので精々はげんで下さい。
無限知識なんて大仰な名前を付けずに普通に検索とかで良いのにマスターは変わってますね。』
うるさいよ! ちょっとカッコ付けたかったんだよ!
後、馬鹿馬鹿言うな。よけいに馬鹿になる気がする。
それでランクアップするとどんな機能が解放されるんだ? それにどうすればランクアップするんだ?
『ランクアップして解放される機能は管理業務がはかどる物としか情報開示されてませんね。ですが総合ネットワークが不完全のままでは大規模な効果を発揮する様な物は元から望めないでしょう。
今の所、個人単位で発動させられる機能ですと管理対象に何かしらかんしょうする位の事しか予想出来ません。
ランクアップの方法は簡単です。出来るだけ多くの管理対象に接触して影響深度を深めていく事です。
そうすれば村の中の地位がひつぜんと上がり周囲から更に注目を集め影響範囲の拡大をさそい支配者層としての価値を高めます。この価値を高める事を最優先として行うことでランクアップを早めることが期待できます。
つまり仲良くして影響力を増し発言力を上げる事ですね。ボッチには無理なお仕事です。もうあきらめますか? 』
アホか。そんな事は手段を選ばなければどうとでもなる。そんな事よりも問題は管理対象に対するかんしょうの方だ。
これは言うまでもなく、俺の俺による俺だけの為のハーレムルート一直線か? ウハウハか? この後この話は異世界恋愛にジャンル替えか?
『何ですか? 異世界恋愛にジャンル替えって。それよりも誰かがこの部屋に近づいて来ています。注意して下さい。アホ面をさらさない様に。』
なんだよアホ面って。ヘルに見えんのかよ? こっちが。
誰か来るならちょっとだまってろよ。まぎらわしいから。
『了解しました。しばらく情報収集にせんねんします。』
ヘルがだまってしばらくすると、ドアを叩く音がひびき続き声がかけられた。
「ロッくん~、だいじょうぶ~、起きてる~? 入っていい~?」
「おう、サーラか。いいよ、入って。」
サーラか。目の前で気絶しちゃったし心配かけたかな。あやまっとくか。それとあの後どうなったのかもついでに聞いとくか。
ドアが静かに開いてサーラがおずおずと入ってきた。儀式の時の一張羅って感じの服じゃなく普通の服だ。そりゃそうか。でも清潔そうな感じで良く似合っている。なんだかすごく暖かな気持ちになってきた。
いつもは感じないなにかもやもやしたものが胸をしめてきて一杯になった。なんか涙腺がゆるんで涙目にもなってきた。
はっ?!
な、なんだこれ? どうなってる? なにかの精神攻撃かなんかか? 急に変な気持ちに誘導されているみたいだ。これが管理対象に対するかんしょうというものか? というか逆にこちらがかんしょうされてないか?
まずいぞ、これは。今俺はなにか分からん者に支配されようとしている。これでは管理者ランクを上げる所ではなく、逆にはくだつされるかもしれん。くそっ、何かこの状況を打ちやぶる策は無いか?
どうするかと冷や汗をかいているとサーラが近づいてきて俺の寝ているベッドの横のいすに座った。
俺もいつまでも寝ているのもなんなので上半身を起こしサーラに向き直った。
「ロッくん~、へいき~? だいじょうぶ~? わたしびっくりしたよ~。きぜつした人を見るのはじめてで~。でもお医者さんのべんきょうになったよ~。ありがとね~。」
「そ、そうか。勉強になったんなら良かったな。ごめんな、迷惑かけて。あの後、どうなったんだ? 」
「うーんとね~、ロッくんがきぜつした後~、おじさんがロッくんをおぶって~、そのまま村に帰ってきたよ~。それだけ~。」
「そ、それだけか。」
「うんそう~。それでね~、ロッくんが良ければ~、お医者さんの練習してもいい~? 」
「医者の練習? どんなんだ?」
「うんとね~、手をにぎって~、おでこをくっつけるの~。」
「うん? そんなんで良いのか? それで何が分かるんだ? まあいい、やってみなよ。」
「やった~、ありがとね~。じゃあやるね~。」
サーラはいきなり俺の右手を両手でつかんで、手首の所にそっと指をそえた。
そうしてそのまましばらくしてから手をはなすと診察結果を俺につげてきた。
「心拍八十、血圧百から百三十、だよ~。つづけて体温をはかるね~。」
な、なんだ、今の? 急にこいつどうした? 語尾が伸びてなかったぞ。なんか言葉もはっきりしてたみたいだし。それに今ので本当に計測できたのか? 十秒もかかってなかったぞ。
こ,これがスキルの力だというのか? お、恐ろしい。馬鹿があっという間に医者になれるのか。
俺は、古代文明の力の片鱗をまざまざと見せつけられた。
俺が脅威を感じおののいているとサーラが顔を近づけて来た。な、なんだ? キスか? キスするのか?
違った。おでこをくっつけてきた。がっかりなんかしてないんだからね!
という所でドアがいきなり勢いよく開いた。
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