第7話 ヘルプ

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 状態:健康:出荷可能

 病歴:無し

 障害:無し

 繁殖:可能

 推定寿命:60

 特技:医術

 称号:無し


 総合ランク:A5


 所属:ロリングストン牧場


  ~ ~ ~ ~ ~


 ……。

 …………。

 ………………。


 は?


 な、なん、だ?


「出荷可能」? な、何が? 何が、出荷可能なんだ?


「繁殖:可能」? 繁殖? 繁殖って?


「総合ランク:A5」? A5? A5ってもしかして肉の質の? 肉の質のことか?


「所属:ロリングストン牧場」? 牧場? 家はいつから牧場なんてやってたんだ?


 あ、あたまが、あたまがどうにかなりそうだ。

 ぐわん、ぐわん、する。ダメだ。うえか、したか、わから、ん。


 ドサッ!!


「きゃあ~?! ロッくん~?! どうしたの~?!」


「おいっ、ハーロック! しっかりしろ!おいっ!!」


 ~ ~ ~ ~ ~


 あ、あれ。俺、俺はどうしたんだっけ? いつベッドで寝たんだ?

 あ、それより森に、森の神殿に儀式に行かないと。スキルがもらえない。早く行かないと集合に遅れる?

 遅れる? 何に? スキルはもうもらった? あれ、そうだったかな? もらったスキル? なんだったっけ?

 なんか、へんなの? あ、サーラ。サーラはどんなのもらったって? 医者? 医者になるのか? でも出荷されちゃうとなれないんじゃ? 出荷、出荷か。どこから? うち? うちの牧場から? だれが? 誰が管理者? え、俺? 俺が管理者? そうか、さよなら、サーラ。サーラ、サーラ、バイバイ。バイバイ。


「うあっ?! 」


 な、なんだ? 夢? 夢を見てたのか? なんか嫌な夢を見たみたいだ。心臓がバクバク鳴ってる。

 あれ、俺いつの間に寝、あっ、そうだ! 儀式に行ってそれで、それでたぶん気を失うかしたんだ。

 そうか。あれは、本当にあった事なんだな。


 …………。


 おい、まだいるんだろ。返事をしろ。


『はい、お久しぶりです。マスター。御用件をお伺い致します。』


 おい、そこからやるのかよ。なんか根に持ってんのか? まあいい。お前に聞きたい事がある。


『はい。なんでもお聞き下さい。ですが、何でもは答えられません。知っている事だけです。』


 なんだかめんどくさい奴だな。まあいい。じゃあ質問だ。

 この村は宇宙人か魔族だかの人間牧場なんだろ? 人間は奴らの食料となる為に飼われていて、俺たち選ばれた少数の者だけがその事を知っていてここを管理している。違うか?


『はい。いいえ、違います。』


 そうか、違うのか。って違うの?! 今、はいって言ったじゃん。


『はいは応答です。いいえが返答です。間違えないで下さい。』


 そ、そうか。分かった。気を付ける。ホントめんどくさい奴だな。

 で、違うっていうならなんなんだよ。


『はい、違います。では説明致します。

 元々ここには貴方の家が経営する牧場しかありませんでした。時間が経ち牧場の周りに住む人が増えてある程度家が集まると物を売る店ができそれらが集まって村をつくっていったのです。そして現在の規模にまで発展しました。その後牧場の経営規模は縮小した様ですが今でも親戚の方が継続して運営している様ですので厳密にいうとここは現在も牧場で貴方の家が牧場主と認められます。

 それとは別に遥か昔は総合ネットワークが住民の生活全般をサポートしていました。今とは規模が全然違い、この国、ひいてはこの世界全体の管理を任される程でした。しかしある時、何らかの事情でシステムの大半を失う事態が起きネットワークが寸断されました。この時何が起きたかは記録が破壊された為残ってはいません。

 分断されたこの地区に存在したネットワークは僅かに残った残存システムを使いこの地区の管理を続けようとしましたが運用リソースが足りず仕方なくここの牧場の商品管理システムを取り込みどうにか稼働出来るまでには回復しました。しかし、出来るだけ運用リソースにコストを掛けない様にした為、元にした様式をそのまま使う事になってしまいました。現在もその影響で住民管理データに商品管理データの様式が残ってしまっている状態です。

 また現在に至っても総合ネットワークの修復は進んでおらず住民管理システムの完全回復は見込めていません。』


 つまり、ネームプレートの表示は形だけで実際は商品扱いじゃないという事でいいんだな?


『はい、その通りです。システムに不備が有り誠に申し訳ありませんでした。以後、精進致しますので今後とも宜しくお願い致します。』


 はあー、なんだよもー。びっくりさせるなよなあ~。気絶なんかしちゃって恥ずかしいだろ~。もうどうしてくれるのよー。俺の株がだだ下がりじゃね~?

 まあ、だが、なんだな。それでも、良かったか。

 俺は、この世界がディストピアかなんかで世界の闇と永遠に戦う事になるのかとか考えていたからな。

 ひょうし抜けだよも~。あ、ディストピアって分かる?


『はい、分かります。ですが現在の世界情勢をかんがみますとあながち間違ってもいないかと思われますが。』


 え、そうなの? この国ってそんなにヤバいの?


『いえ、違います。この国ではありません。周辺に存在する国家です。総合ネットワークが接続されていない為詳細は分かりませんが収集した情報では数ヶ国の政情があやしくなって来ている様です。

 推定では後数年で各国に影響が出始めるでしょう。』


 はあ~、やだね~。戦争でも起きるのかね~。まあここら辺は関係ないんだろ? え、もしかしてあるの?


『直接の被害は見込まれておりません。ですが兵役や人の流出、経済への悪影響などもろもろが考えられます。』


 まあ、そんな事は大人が考えればいい事だ。俺には関係ない。

 あ、そういえば、お前って名前あるの?


『はい、私の名称はヘルプと呼ばれています。

 ハーロック様をマスターとしておつかえさせてもらいます。よろしくお願い致します。

 ですが本来なら五年前にはすでにおつかえ出来ていたはずなのですが。マスターとの最初の接触の時になにかご気分を害されたのか接続を拒否されてしまい、そのまま存在を忘れられた様でした。

 もっとお役に立てられたかと思うと残念でなりません。

 今後は接続が拒否出来ませんので存分にお使い頂ければと思います。』


 お、おう。なんかたまってたのかね。まあいい。じゃあこれからよろしくな。

 それとお前はこれからはヘルプじゃなくてヘルって呼ぶことにしたい。前世ではヘルっていうのは地獄って意味らしいけどここじゃ違うだろ? それでいいか?


『はい、これから私はヘルです。コンゴトモ、ヨロシク。』




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