第6話 サーラ
俺はネームプレートの右端にある「▼」の記号を見てなんだこれと思った。
なんの意味があるんだとじっと見ていたらスイッチだったらしく反応して下の方にズラッとデータらしきものが新たに表れた。
~ ~ ~ ~ ~
サーラ (10)
管理No.432851976357
推定 body size
L:140
W:40
B:66
W:55
H:68
…………
…………
…………
~ ~ ~ ~ ~
上から見ていくと「名前」「年齢」「管理No.」「推定 body size」と出ている。
これはいわゆるステータスとか言うものなのだろうか。だがなんか知っているのと違う気がする。
俺が知ってるのは「強さ」とか「素早さ」とかいう身体能力を表しているやつなんだがこれにはそれは含まれていない。これは単なる個人情報というやつなんじゃないか?
何でこんなデータが乗っているんだ? 個人情報なんてこの世界では大して意味が無いと思うんだが。
そんなことを考えながらデータを順に見ていく。
こいつにも「管理No.」があるのか。数字はけっこう大きな数だな。四千三百億なんて数字いつからカウントしてるんだよ。この村の何百年何千年分の人口を合計してもそんな数字にはならないだろう。
さすがにこれはランダムに数字を割り振ってるんだよな? じゃなきゃ怖いよ。あの古代遺跡いつからあるんだよって話になる。
それに俺のNo.って確か前の方は0が並んでたよな。俺のはランダムじゃないのか? 管理者だから数字も小さい特別なやつか?
次に書かれているのは「推定 body size」か。これってどうやって調べてるんだ? 推定ってあるからには見た目ってことか? あの石碑にカメラの機能とかがあってそれで分かるのか? まあそれよりもこの数字って特に単位がしめしてないが俺の前世の記憶の単位なのか? このネームプレートを見ている観測者が俺だから俺基準になってるのか?
あっ、恐ろしいことに今になって気付いた。いくら動揺していたからといってこれはないだろう。
ほんと馬鹿か俺は。
俺、この書かれている文字無意識に全部読めている。
俺はこの世界に転生して十年たつがろくに文字を見たおぼえが無い。
バズロックなんかは何やら書類やら手紙みたいなのをやり取りしているようだが俺には特に文字を勉強しろだなんて今まで言われなかった。あきらめられているのか?
まあ勉強しようにもここには教科書なんてしゃれた物はない。字を覚えるには教会の聖書などを参考にして神父かシスターに教えて貰うしかないが、俺は説教臭いことをいつも言う神父が嫌いだったので教会に近づかなかった。
それに俺は無限知識で前世の文字が分かることで自分が書きとめたりする分には困ってなかったからこの世界の文字に必要性を感じてなかった。だから俺はこの世界の字が読めない、はずだった。
なのに古代遺跡から授かったお力の能力で表示された文字、すなわち古代文明文字は読める。
これは一体どういうことか。
俺が以前から持っていた無限知識はたぶん古代文明ゆらいだろう。頭の中の女がその証明だ。
俺が覚えている最古の記憶で話しかけて来たのがこいつでその事が切っ掛けで無限知識を使えるようになった。そして無限知識と俺の前世はつながっている。もしかすると俺が異世界転生できたのも古代文明のおかげなのかもしれない。
俺が古代文明の文字が読めるのは納得したがネームプレートに個人情報が表示されている謎はそのままだ。
いろいろ考察しているあいだにサーラはなにかいい事があったのかうれしそうにしていた。
その顔を何でだろうと見ていると、ニコッと笑って理由を語りだした。
「あのね~、さずかったお力がね~、お医者様になれるっていうのだったの~。ほんとは~、薬師がよかったけど~、どっちもケガをなおせるから~、おんなじだよね~。これで~、ロッくんが~、いつケガしても~、だいじょうぶだからね~。」
そんな訳があるか。そんなにのんびりしてたら助かる者も助からんわ。まあ、こいつもその内シャキッとするかもしれん。いつかその時が来たら頼むわ。
生暖かい目でサーラを見ていたらさっき開いたままになっていたネームプレートの個人情報の続きが気になった。
そういえばお力も表示されるのか? 無いとおかしいよな。
俺は開いたままだった個人情報の続きをあらためて見だした。
そして俺は今日何度目になるか分からない驚愕を味わった。
そこにはこう表示されていた。
~ ~ ~ ~ ~
…………
…………
…………
状態:健康:出荷可能
病歴:無し
障害:無し
繁殖:可能
推定寿命:60
特技:医術
称号:無し
総合ランク:A5
所属:ロリングストン牧場
~ ~ ~ ~ ~
……。
…………。
………………。
は?
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