第4話 魔石碑

道の状態がよくなったり道幅がひろくなって視界がひろがったので歩くはやさも早くなった。

 順調に進んでいると思われたが急に前方の護衛の人が立ち止まった。狩りを仕事にしている人だ。

 なにかの気配でも感じとったのかまわりを気にしている。

 みんなに注意するように呼びかけていると列の右横から草がうごく小さな音が聞こえてきた。

 子供たちはびっくりして縮こまり大人たちはそちらに剣をむけた。


 しばらくすると急に草がすれる大きな音がして犬のような動物が現れた。そいつはこちらを見回すと低いうなり声でいかくした。

 子供たちは悲鳴と驚きの声をあげ道の反対側に後ずさった。

 ちかくにいた大人たち数人が子供たちをかばうように移動してそのうちの一人が剣でそいつに切りかかっていった。

 そいつはそんなに強敵ではなかったのか何回か剣をふるうとどうやら倒せたようだ。


 死んだそいつをよく見るとそんなに大きくはなく痩せていてみすぼらしい感じがした。

 もしかすると群れからはぐれたか追い出されたのだろう。そして腹が減りがまんできずにしょうがなく襲いかかった結果がこうなったのかもしれない。まあこちらにはそんな事はかんけいないが。


 魔物らしきものをじかに見たのは初めてだったがそんなに怖く感じなかった。前世の記憶の影響だろうか。

 これはちょっと不味いかもしれない。危険を危険と判断できないとケガをする確率があがって最悪死ぬことになる。前世の感覚がまだ残っているのか? なにか対策を考えないといけないのか。


 などと今のことを振り返っていると魔物の後始末が終わっていた。後始末とは体内にある魔石を取り出したりなにか使えるものを採取したりすることだ。今回はほかに大事な用事があるのでとりあえず魔石を取るだけにして残りは帰りにほかの魔獣などに荒らされていなかったら持ち帰るようだ。道の端の方に持っていきにおいの強い草などで隠していた。


 バズロックが俺にとった魔石を見せてくれた。自慢ぽく。

 あんたがやっつけたんじゃないだろと思ったが遠慮なく見せてもらった。


 魔獣からとった魔石はまだちょっと血で汚れていたが半透明なガラスかプラスチックのようだった。

 色は赤っぽく形は水晶の結晶のような立方体で中になにか電気回路のような筋が走っている。

 宝石のようだが中に筋があるので明確に分けられているらしい。

 これが魔道具の材料になるらしいが詳しいことは分からない。興味はあるが大事な魔道具を壊されてはかなわんといじらせてもらえない。バズロックのけち。


 よけいな事で時間をくったがその後も警戒しながら進みようやく神殿についた。

 神殿の見た目は真四角の角砂糖を思わせるかたちで周りをつたや木がおおっている。

 建物の裏にとりわけ大きな木が生えており広がった枝が建物を覆い隠すような感じになっていた。

 建物の入り口は正面右端にありなんだか裏口のように感じる。


 とびらは石のようだが陶器のような感じもする。鍵などはかかっている様子はなくすんなり開いてぞろぞろとみんなで入っていく。

 中に入ると真っ暗かと思っていたが奥にある石碑のような物体がほのかに光っていて部屋全体を照らしていた。

 部屋の中は奥の石碑いがいは祭壇のような物しかなく、その祭壇には森でとれたまだ新鮮そうな果物なんかが置かれていた。ここには頻繁に人がきているようだ。


 さて、ようやくスキルをさずかる事ができそうだ。

 最初にバズロックが一人前に出て今日の「精霊の導き」の儀式に対してのお礼をのべおじぎをした。

 子供たちは石碑のまえに横にならべられ順番に直接石碑に手をついて「お力をお授けください」と唱えるようだ。はしの方から石碑に手をついてもらったスキルに一喜一憂している。

 俺は反対のはしっこに並んでしまったのでいちばん最後だ。


 みんなの儀式を見ながら石碑に目をむける。

 石碑の外観はここに来るとき見せられた魔石を天井につくくらい大きくしたような感じだ。

 それもそのはず、石碑の下の方にその魔石がいくつもそれこそ数えられないほどくっつけてある。こうしておくとその内に石碑本体に取りこまれ一体になるそうだ。

 すなわち石碑とは巨大な魔石のかたまりということになる。

 いくらスキルがもらえるという恩恵があってもそりゃ異端宗教あつかいされる訳だ。

 もとが恐ろしい魔獣の体から出たものを祭っているなんて悪魔崇拝みたいな感じか。

 しかしそこまで村人たちを悪く言えない理由もある

 それは不思議なことに家畜や人間の体からも魔石が出るからだ。つまりこの地上にいる大体の生き物はみんな魔石を持っているということになる。


 もっとも石碑には人間の魔石はささげないらしい。それは人間の魔石には魂が宿っているという考えがあって取りださずそのままお墓に入れるのが当たり前だからだ。


 そんなよそ事を考えている内についに俺の番になった。

 精霊様頼むよホントに!

 いいスキル下さいね!

 よろしくお願いしまーす!!


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