第3話 森の道
いよいよ森に入ろうかという所で、どうして村長であるうちの父親がついてきたのか大体訳がわかった。
ただでさえ危険な夜の森に明かりなしで入ろうなんて、無謀以外の何物でもない。最低限辺りを照らすたいまつなんかが必要だ。
しかし、森の中でもし魔獣とか動物に襲われた時、たいまつを手に持っていたら満足に戦えない。そうした時、たいまつを捨てていたら最悪山火事になってしまうかもしれない。
たとえボヤですんだとしても、なぜ夜の森に行っていたと後で誰かまずい人に不審に思われるかもしれない。
そんな事にならないように、火事の心配のない安全な明かりの魔道具を、この儀式のときはいつも使っているようだ。だけどそんな便利な魔道具はこんな辺境には滅多にない。あってもうちを含めて何個かしかない。
それを使うのだから出来るだけ壊さないようにと、念の為見張る必要があってその為だろう。
父親が灯りを持っている人に大事に取り扱うようにとくどくどと言っていた。
ところで、まったく関係ないが俺の父親の名前はバズロックという。あだ名は知らないが俺とかぶって無いよな。嫌だぞ、そんなの。ほかの家族の事はまた後で話そう。
森を進む一行は前後に数人の大人の男女が護衛している。狩りや戦闘の経験のある村人から選ばれているらしい。近所の優しいおばちゃんが皮鎧を着て剣を素振りしている姿が結構サマになっているところを見ると、この村の辺りはやっぱり大分危険な所なんだなと思う。
子供たちは友達どうしで手をつなぎこわごわと歩いている。
ただでさえ一人では絶対に入るなと言われている森に、それも絶対に家から出てはいけないと怒られる夜に出歩いているという事でかなり緊張しているようだ。
俺は前世の記憶があるからかそんなに緊張していない。危険な魔獣なんて毛皮くらいしか見たことがないしそんなに危機感を感じられない。
そんな時に俺より危機感を感じていないような奴がのんきな声で話しかけて来た。
「ねえねえ~、ロッくん~。ロッくんはどんなお力をさずかりたいの~? やっぱり~剣術とか~? 」
とぼけた感じで話しかけて来たのは幼なじみのサーラだ。まあここには同じ十歳の幼なじみの奴しか辺りにはいないが。
俺はいやがおうにも高まってきた期待でそんな事には構ってられないので適当に返事しておく。
ちなみに村のみんなはスキルの事をお力とか呼んでいる。
「うん? まあそんな感じだな。」
「そっか~。ロッくんなら絶対もらえるよ~。わたしは~お薬屋さんになりたいから~お薬に関係あるのがいいな~。」
サーラの家は古くから薬師をやっている。いつからやっているのか分からないほどだ。
俺の家とはとうぜん古いつきあいで親戚でもある。それをつぎたいのかね。
まあがんばりなよ。
どうでもいいことだがサーラが俺のことを「ロッくん」なんて変な呼びかたをしているのは、みんなが俺をあだ名で「ロック」と呼んでいたので「ロックくん」と最初は呼んでいたが、なんか言いにくかったので縮めたからだそうだ。しょうじきに言ってやめてほしい。そう言ったが気にいっているのでダメだそうだ。はあ。
「俺も俺も! やっぱり男は剣術だよなー。それ以外に思いつかねーよな! 」
そこに横から割りこんでくる奴がいた。
同じく幼なじみのガッシュだ。まあここには……それはもういいか。
ガッシュはいつも俺といっしょに剣術の訓練をしていたので俺と同じくらいの力量だ。
こいつが剣術をもらえるなら俺なら確実だろう。
ガッシュの家は古くから俺の家に仕えていて、サーラの家と同じように親戚でもある。なので信頼もあつくバズロックにも大いに頼られている。
だからかふたりの家は俺の家のちかくにたっている。
「そうだな」
また適当に返事をかえし、声が大きいと怒られてもまだ懲りずに小声で話しながら森のほそい道を進んでいくと、道がとつぜん変化した。
いままでの道はけもの道がちょっと幅がひろくなっただけのような感じで地面がデコボコしていたが、急に石の板がしかれきれいにならされている道になった。
石の大きさはまったくおなじに見える。
この辺では石材が取れるような場所はちかくにないはずだ。どこから持って来たか分からないがたいへんな労力だと思われる。
俺はうれしくなってきた。顔のニヤつきが止まらない。
これはもしかすると森の神殿っていうのは失われた古代文明のかくされた遺跡とかいうのじゃないか?
さらに期待が高まってきたぞ。
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