第25話 ドキドキ♡一泊二日現代社会旅行♡
「まずはみなさま、お疲れさまでした」
ぺこりと頭を下げるのは初日以来、顔を合わせていなかった霧島さんだ。
ユキナとの一戦を終えた後、俺たちは学園長室へと呼び出され、いかにも高そうなソファへと腰かけていた。
だが、ここにいるのは俺、クラリア、パコリーヌ、フローラの四人だけ。
「あの……ユキナたちは?」
「そのことについてご説明をしようと思い、お呼び出しをいたしました。結論から申しますとユキナ・ララボンドさん、リミミ・クラジリーナさんの両名は本国へと強制送還の処置をとらせていただきました」
「……!?」
「本国送還って……えらく重い措置ね、霧島」
基本的に何でもありな童貞デスゲームにおいて脱落を意味する処罰に思わず閉口してしまう。
確かに彼女はだまし討ちをして、俺の童貞を奪おうとしたが、そういうゲームなのだし問題ないのではないだろうか。
他のみんなも神妙な面持ちで話の続きを待っている。
「大きな理由としてはユキナさんのメンタル面での問題です」
「メンタル面、ですか?」
「はい。天獄学園においてサキュバスであるみなさんはあくまで童貞を奪う意思がなければいけません」
童貞を奪うゲームをしているのだから当然だろう。
……なるほど。そういう側面から見れば、ユキナがA組のみんなをバカにしていた理由もわかるな。
理解と納得は全くの別物だけど。
「しかし、宮永様に返り討ちにされ雌豚落ちしてしまった彼女は自ら襲う意思を捨てて、ただ嬲られたいという欲求ばかりになってしまいました」
「えぇ……」
「この童貞デスゲームのプレイヤーとして相応しくないと判断しました。故に本国へと強制送還されたのです。リミミさんについてはユキナさんのそばにいると共に離れる決断を下しました」
そんなアホみたいな理由で本国へ返された前例はあるのだろうか。
さんざんバカにされていたクラリアは笑いをこらえきれずに、クスクスと漏れてしまっている。
「もちろんそれだけではありませんよ。サキュバスたちの間では『ドスケベ過激派』が問題視されていますから、その見せしめにもしたかったのでしょう」
「あ~、確かに。ユキナの家ってすっごいお金持ちだから影響ありそうだもんね~」
「サキュバス側としてもあまり悪いイメージを私たち人間に持ってほしくないのでしょう」
「人間がいなくなったら、サキュバス……繁栄できない……」
「その通りです。過激派はサキュバスのためと言っていますが、その実サキュバスの首を絞める行為しかしていません。どの世界でもままならないものですね」
ふぅ……とため息を吐く霧島さん。
彼女はいわば人類政府とサキュバス界に挟まれた立場だ。
その疲労は俺たちでは想像しがたいものだろう。
「以上の理由から体イクっ祭は延期になります。とはいえ、生徒の皆さんも楽しみにしているのはわかっているのでそう長くはならないよう調整いたします」
延期は素直に助かるな……。
ユキナにお仕置きするために聖なる魔力を消費したばかりだ。
ちょっとでも補充しておきたい。
寸止めはそう頻繁に使いたくない。体にも悪影響だからな。
「それともう一つ。大吾さんには嬉しいお知らせがあります」
そう言うと、彼女は一枚の紙を俺へと渡す。
「正直ここまでやってくれるとは思いませんでした」
そこに書かれていたのは、一泊二日の外出許可。
認可のハンコが押されているってことは……。
「大吾さん。あなたに一泊二日の間だけ安庵島の外に出る権利を差し上げます」
もちろんいろいろと制約はあるだろう。
だけど、久しぶりに家族に会うことができる。
それだけで嬉しさがこみあげてきた。
「よかったね、みやっち!」
「……ま、一週間頑張ったんだし、ちょっとでも羽を伸ばして来たら?」
「お、お兄ちゃん……寂しいけど……楽しんできてね」
「みんな……ありがとう……」
「見送りのところ、悪いのですが皆さんにも関係ありますよ」
「「「えっ」」」
「外出には安庵島の関係者の同行が不可欠です。急で申し訳ありませんが、本日中に出発の準備をして夜、港まで集まってくださいね?」
固まる俺たちをよそに霧島さんはニコリと微笑む。
「「「えぇぇぇぇっっ!?」」」
直後、三人の驚愕の声が学園長室に響き渡った。
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