第2話 童貞デスゲーム
俺を乗せた車はどんどん家から離れていく。
揺られている間に天獄学園の説明が霧島さんによって行われていた。
「宮永様に行っていただくのは、簡単に言えば命の代わりに童貞を賭けたデスゲームです」
実は彼女はものすごく疲れているんじゃないだろうか。
はっきり言って全く内容が浮かんでこないが、霧島さんはいたって真面目な顔をしている。
俺も神妙な面持ちで頷いた。
「天獄学園を童貞で卒業すれば宮永様の勝ち。約束通り、何でも願いを一つ叶えましょう。しかし、童貞を失ってしまえば問答無用で敗北となります」
彼女はタブレットをタップして一枚の地図を開けると、大きく拡大させて見せてくれる。
「舞台は
「ちょっと待ってください」
情報量の多さに脳がパンクしそうになる。
俺以外の女性が全員敵……? つまり、100人の変態が集まっているということか?
……いや、落ち着け。
もうこれくらいで驚いてはいけない。俺は常識で測れない世界に身を投じているのだ。
「俺以外に男はいないんですか?」
「いません。天獄学園に入学できるのは優秀な遺伝子を持った選ばれし若い
バカにされてる? という言葉を飲み込んで次なる質問を繰り出す。
「童貞じゃないとダメなんですか?」
「その通りです。童貞でなければゲームが成立しませんから」
そう言って霧島さんは別のタブを開く。
そこには見覚えのある有名な資産家や実業家、大手会社の社長の名前が並んでおり、横には賭け金額が記されている。
ベットの対象は『俺が童貞を守れるか、否か』。
「こちらは今回の出資者の皆様です。宮永様の勝利報酬である願いは彼らが出したお金で叶えられます」
まともに生きていたら一生かけても手に入らない金額が目の前に映し出されている。
確かにこれだけあれば叶えられない願いはないだろう。
晴夏の治療費も十分に賄える。俺にとって挑む価値が提示された。
だが、それでもまだ納得のいかない部分もある。
「こんなことをして国にとってメリットはあるんですか? 正直言って女性に囲まれて童貞を失わない男の方が少ない気がしますが」
「宮永様の言う通り、成功した童貞はいません。ですが、国としてはそれでも問題ないのです。金儲けが目的ではありませんので」
「じゃあ、何のために?」
「それについては学園が設立された理由からお話する必要があります。長いですから、また明日にしましょう。今日は概要の説明のみ、ということで次はこちらを」
霧島さんはタブレットを俺へと差し出す。
画面にはよく見る黒板が映っていた。天獄学園の教室で録画された動画だろうか。
「宮永様の所属する一年A組を代表してあいさつをいただいております。ご覧ください」
「クラスメイト……わかりました」
つまり、俺が勝者を目指す上で障害となる子たちというわけだ。
俺の童貞を狙う変態……。
一体どんな女子が出てくるのか……。
ゴクリとつばを飲み込み、意を決して再生ボタンをタップした。
『は~い、新しくやってくる童貞の宮永君! こんにちは~! リミミだよ~!』
ピョンピョンと元気に跳ねながら挨拶する少女が映し出される。
金色の髪に大きな赤のリボンがぴょこぴょこ揺れていて愛らしさを感じる。
だが、それ以上に視線がいってしまう大きな胸と胸元の開いた制服。
上下しすぎて、彼女のおっぱいが先にこぼれ落ちて「こんにちは」しそうな勢いである。
のんきにに挨拶している場合ではない。
『こら、リミミ。あなたはあちらに行っていなさい。動画は私の担当です』
すると、横から新たに現れた黒髪の少女がリミミを画面外へと追いやる。
ブーイングが聞こえてくるが気にした様子もなく、長い髪をフワリとかきあげて彼女は笑みを浮かべた。
『初めまして、宮永大吾さん。あなたと同じクラスの委員長を務めるユキナと申します』
『ここ――
『この島ですべきはそれだけ。その他、必要な物はなんでも用意させていただきます』
『詳しいことは霧島さんから教えてもらえると思いますけど……あぁ、そうだ。ちゃんと授業中は私たちも手出しはしませんから安心してくださいね。――で・す・が』
『休み時間、放課後は別です。全力で大吾さんを襲います』
『もちろん強姦ではありませんわ。だって、入学した時点で合意ですもの。正真正銘、愛し合いですから……うふふっ』
『三年間、童貞を守りきったら大吾さんの勝ち。童貞を奪えば私たちの勝ち』
『あなたの顔写真をいただいた時から……私たちと~っても楽しみにしていますの』
『さぁ、始めましょう。私たちとあなたの願いを賭けた日常を』
最後にチロリと唇を舐めるユキナと名乗る少女。
丁寧な口調とは裏腹にずいぶんと好戦的な子だった。
ひとまず動画を見て、一つわかったことがある。
「全員あんな胸元が大きく開いた制服を着ているのか……」
彼女はクラス委員長だと名乗っていた。
もしあんな破廉恥な姿を毎日見なければならないと思うと、想像しているよりも厳しい戦いになるかもしれない。
現になぜか彼女たちの姿を見てからムラムラとむず痒い欲求がふつふつとわきあがっている。
くっ、俺としたことが……! 家を出る前に一度処理しておくべきだったか。
性欲は強くないと自認しているので油断してしまっていた。
「すでに苦しそうですね。ですが、もうリタイアは出来ませんのでご了承ください」
「もちろん、そのつもりはありません。少しばかり酔っただけです」
「……本当は変な気分になってしまっているのではありませんか?」
「っ……! どうしてそう思うんですか?」
「宮永様がおかしくなってしまったのではありません。彼女たちを視界に収めてしまえば誰もが同じ状態になる。それはなぜか」
「天獄学園に在籍する彼女たちはみんな――サキュバスだからです」
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