結婚を前提にお付き合い!?
「先輩、好意は大変嬉しいですが、いくらなんでも過程をすっ飛ばしすぎです。俺達まだそこまでの関係じゃないでしょう」
「その割にはわたしの胸ばかり見てる」
「…………っ!!」
鋭く指摘され、焦る俺。
仕方ないだろう、目と鼻の先に零れ落ちそうな谷間があるからな。見るなという方が難しい。それに、俺は先輩に押し倒されている状況。ほぼ強制的に直視する体勢なのだ。
「やっぱり男の子は胸が気になるものなの?」
「当たり前ですよ。先輩のは……特に凄いですからね。だからって
「むぅ、そう言われるとますます藤宮くんを振り向かせたくなる」
「なんでですか。俺なんて魅力ないですよ。陰キャですし、ぼっちですし……勉強だって平均値。唯一の自慢は可愛い妹がいるくらいです。こんな俺とアイドルの先輩じゃ釣り合わないですよ」
そうだ。これだって先輩が面白半分で
「そんな事はないよ」
「ありますって!」
「ない」
「あります!」
「ないってばない」
「あるってばある!!」
そんな攻防が続き、俺は少し苛立った。
「プレゼントを無視され続けて心が燃え上がったから、俺が気になっただけなんですよね。そんな俺のどこがいいんですか!? 藤谷の方がよっぽど魅力でしょうに」
「だって……だって好きになっちゃったんだもん……」
涙目になって立ち上がる先輩は、部屋を出て行こうとする。……しまった、そんな泣かすとかそんなつもりはなかったんだ。
「先輩――待って、うあぁッ」
必死に追ったらシーツで足を滑らせた。俺はそのまま先輩を押し倒し……顔が柔らかいものの上に落ちた。……なんだ、このやたら弾力のある……って、まさか!!
「…………ふ、藤宮くん。そ、そこは……ちょっと」
微かに先輩の心音が聞こえる。
しかもドキドキと激しく。
こ、これは間違いなく――!!
「啓にぃ~~~! 花さんの下着買ってきたよー!! って…………え!?」
なんちゅうタイミングで部屋に入って来るんだこの妹! とんでもない現場となってしまった。
「ま、待て……楓。これはその……」
「……啓にぃ、花さんに何してるの!!」
「不可抗力というかマーフィの法則というか」
「なに誤魔化してるの。シャツ一枚の女の子襲うとか……サイテーって言いたいところだけど、まあ啓にぃはそんな度胸ないよね」
あっさりと怒りを収める楓。
悔しいがその通りだった。
だって、相手はアイドル。魅力満載の先輩なんだぞ。指一本触れる事すら恐ろしい。上手く平静を装ってはいたが、今までの一連だって俺はずっと心臓が鳴りっぱなし。ドキドキの連続だった。
「楓ちゃん、わたしは大丈夫。藤宮くんは、倒れそうになったわたしを庇ってくれただけだから安心して」
「そ、そうなのー?」
「うん。藤宮くんは優しいお兄さんね」
「……じ、自慢の兄です……」
俺と楓の関係を壊すまいと先輩は擁護してくれたのか。それは嬉しいな。楓は冗談っぽく言っていたが、あのままだったら嫌われていた可能性さえあった。だけど……そうか。俺は少しだけ先輩を誤解していたかもな。
「というわけで、藤宮くんとは結婚を前提に付き合う事になったの」
「って、まてえええええええいッッ!!」
それは嘘だ~~~~~~っ!!!
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