俺をベッドに押し倒してくるえっちなアイドル先輩

 俺の妹『藤宮ふじみや かえで』は血の繋がらない義妹ぎまい。五年前に引き合わされ、俺と楓は出会った。


 一歳年下で、気難しい年頃となった今――俺と楓の関係は。



けいにぃ~! 今日も“すいっち”で遊ぼー」



 めっちゃ仲が良かった。

 本当の兄妹……いや、それ以上の蜜月の仲。前世は恋人同士だったかもしれない疑惑あり。毎日、ゲームをしたり、ラインしたりするくらいお互いを信頼し合っていた。


 楓は目を星のようにキラキラ輝かせ、俺に“すいっち”を向ける。今遊んでいる暇はない。先輩の件が優先だ。



「楓、話があるんだ」

「う~ん? 話ぃ?」



 俺と楓は身長差があるから、楓が自然と上目遣いになる。うん、今日も可愛い。



「実はな、この家に『先輩』が発送されてきた・・・・・・・

「は? 何言ってるの、啓にぃ……頭打った?」


「打っとらん。冗談じゃないんだよ、今俺の部屋にシャツだけ着た半裸の先輩がいるんだよ。助けてくれ」

「た、助けてくれって……えっ! 本当に先輩さんがいるの?」


「ああ、本当だ。下着もつけてない先輩がいる。このままだと俺がどうかなりそうだ……楓、悪いんだが下着を貸してやってくれ」



「ええッ!?」



 さすがに顔を赤くし、ドン引く楓。

 ですよねぇ……。



 当然の反応だし、いきなり下着貸してくれとかキモすぎるよな。だが、そうも言っていられない状況なのだ。許してくれ、我が妹よ。



「マジなんだから仕方ない。一度、来るか?」

「マジぃ!? わ、分かったよ」



 俺は楓を連れ、部屋へ向かった。



 ◆



「このガチアイドルが『和泉いずみ はな』先輩だ」


「…………うそ」



 紹介すると楓はカチコチに固まっていた。驚きすぎて石像になってしまったようだ。なんてこった、こんな衝撃を受けるとは想定外。



「先輩、このマフィンのような髪色をした女の子は、俺の妹で『楓』です」

「わぁ、可愛い妹さんね。よろしくね」


 楓の手を取り、ぶんぶん振る先輩。しかしながら、楓は石化して微動だにしない。こりゃイカンな。ショックがでかすぎた。



「おーい、楓。戻ってこいって」



 俺は自然と楓のおでこに手を当てた。すると、パチクリ目を覚ましして楓は動き出す。


「け、啓にぃ! 和泉いずみ はなって、あのアイドルのだよ!? なんでいるのー!?」


「なんだ、楓は知っていたのか」


「知ってるよー! 有名人じゃん! アイドルユニット『ウィンターダフネ』のメンバーだよぉ!?」



 アイドルユニット……?

 ウィンターダフネ……?



「そこまでは知らん」

「知らんって、啓にぃ……この前、テックトックで見せたじゃん。踊りがキレキレで凄いんだよ~」


 あー、三日前にそんなのを見せてきたな。興味がなかったので忘れていた。俺は先輩がアイドルだってくらいしか知らなかったが、そんな凄いユニットだったのか。



「とにかく、先輩の下着を頼む」

「わ、分かった! じゃあ、代わりに買ってくるよ」

「なるほど、その手があったか」


 俺は楓にお小遣いを渡した。



「ご迷惑をお掛けします、妹さん」

「か、楓でいいですよぉ~。あたしも和泉さんって呼んでいいですか!?」

「じゃあ、名前で」


「わぁ! 憧れの人を名前呼びできるとか夢のよう。啓にぃ、凄い人を連れてきちゃったね。元から好きだけど、もっと好きになったわぁ! じゃあ、行ってくる」



 テンション爆上げで部屋を去っていく楓。あんなにはしゃぐ妹は初めて見た気がする。でも上機嫌で何より。



「とても可愛い妹さんね」

「ええ、あの笑顔には救われます。だから頑張ってこれた」

「これは負けていられないかな」


「え?」


「なんでもない。それより、藤宮くん……二人きりだね」



 いきなり俺をベッドに押し倒してくる先輩。その口元にはいつの間にか『0.01』が……って、まてまて、普通逆だろ――――――!!!

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