自宅に全裸の先輩が届いた日

「なにやってるんですか……先輩」


 先輩の不可解な行動に思わず飛び出てしまった俺。和泉いずみ はなは、ぎょっとした表情でこちらを見ていた。



「…………え、あの。これは……その、『藤谷ふじたに けい』くんにプレゼントを……」



 ちょっと待って。

 俺の名前じゃないじゃん。

 もしかしてこの先輩!!



「藤谷……圭? ちょっと待って下さい。藤谷ってあの俺と同学年のイケメンですよね。女子にモテモテの……確か親が大手企業の社長とかの」


「うん。……って、あれ、この下駄箱じゃなかったの!?」


「俺は『藤宮ふじみや けい』なんですが」


「ふじみや……けい? あれ、藤谷 圭さんってこの下駄箱じゃ……」



「違います。俺は『藤宮ふじみや けい』です」



 時が止まった。

 この先輩、間違えてるー!!

 勘違いしてるー!!



「う、うそぉ……!」

「嘘じゃないですよ。漢字もちょっと違いますし」

「そ、そんな。じゃあ、わたしずっと違う人にプレゼントを贈っていたの!?」

「みたいですね」


「そ、そんなぁ……漢字が似すぎよ」



 ぐてっと肩を落とす先輩。

 間違えていたとはなんだか可愛らしい人だなぁ。道理で俺のところにプレゼントが届きまくるわけだよ。



「もう間違えないで下さいね、和泉先輩」

「どうしてわたしの名前を?」

「先輩はアイドルで有名人じゃないですか」

「あー、そっかぁ」


 ――この人、ちょっと頭が弱いのかな。まあ、アイドルとはいえ欠点のひとつやふたつあるよな。



「では」



 俺は注意して、クールに去った。

 もうプレゼントされる事も会う事もないだろう。少し話せたのが幸せでもあったけど、彼女は俺の名前違いの男が好きのようだし、接点はこれで断ち切られただろう。



 ……そう思っていた。



 だが、それは間違っていた。



 先輩は何故か後日もプレゼントを送り続けてきた。だめだ、あの先輩!! 分かっちゃいねぇ!!



 もう無視するしかないと思って、俺は一ヶ月耐えた。だが、日に日に増えていくプレゼント。場所を取って仕方ない。



「無視しても送って来やがる、もう限界だ……」



 自宅にいるある日、俺はもう直接先輩に抗議してやろうと思っていた。出掛けようと玄関へ向かうと配達業者が現れた。……あれ、俺なにか頼んだっけ。そんな覚えはない。しかも大きなダンボール。


 なんだこれ、自転車レベルの大きさだぞ。こんなモン、誰が頼んだんだ?



「配達料金は支払われているので置いていきますねー」



 業者はそう言って事務的に去っていく。送料は無料らしい。……いや、それより。


 こんな大型の荷物に覚えがないって。

 いったい、中身はなんだ?



 気になって俺はダンボールを開封。

 すると『ゴソッ』と音がして――なにか生き物らしきモノが入っていると認識できた。こわっ! 何が入っているんだよ!



 その時、ダンボールの蓋が開いて――



藤宮ふじみや けいくん!」

「うわぁっ!! なんだぁ!?」



 俺の名を呼びながら現れる少女。


 って、この人は……!



和泉いずみ はな先輩……どうして」

わたし・・・をプレゼントしに来ましたー!!」



「は? はああああああああ!?」



 ――俺はこの日、全裸の先輩をプレゼントされてしまった……。


 どうして、こうなった!?

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