6−7 弟の出迎え
すっかり夕暮れに染まった空の下、懐かしい我が家にはオレンジ色の明かりが灯っている。
私は深呼吸すると扉をノックした。
コンコン
ややあって、扉が音を立てて開かれた。
ギィ〜…
扉が開いて姿を現したのは私よりも3歳下の弟のフレディだった。
「え?!お姉ちゃんっ?!」
フレディは私を見ると驚きで目を見開いた。
「ただいま、フレディ。まぁ…少し見ない間に背随分が伸びたのね」
数カ月ぶりに会ったフレディはいつの間にか私の背丈を超えていたし、声変わりもしていた。
「それはもう僕は13歳だから…って言うか、どうして急に帰ってきたの?お父さんとお兄ちゃんは今年の冬はお姉ちゃんは帰って来ないって聞いていたのに!」
「ええ、私も帰ってこれないと思っていたけど事情が変わったのよ。とりあえず上がらせて貰える?」
「あ、ご・ごめん。気付かなくて。入ってよ」
フレディがドアの脇に避けてくれたので、私は家に中に上がり込んだ。
「荷物、重そうだね。持つよ」
「フフフ…ありがとう」
フレディが荷物を持って私の前に先に立って部屋の奥へ入っていく。その後ろを私は続いた。
廊下を歩いていると他に人の気配が無いことに気付いた。
「ねぇ、お父さんとダミアンは何処なの?」
「お父さんとお兄ちゃんは町に花とハーブの苗を売りに行ってるよ。もうそろそろ帰って来る頃じゃないかな?」
「え?そうだったの…?駅に着いた時には見かけなかったけど…」
まさかあんな狭い街で父とダミアンに会わなかったなんて…。
「ひょっとして店の中に入っていたんじゃないかな?取り合えずリビングで待っていなよ。今食事の準備をしていたところなんだ」
フレディはリビングの部屋の隅に荷物を置くと、台所へ行こうとした。
「あ、待って。食事の準備をするなら私も手伝うわよ」
一緒に台所へ行こうとすると、フレディは怪訝そうな顔を浮かべた。
「え…?だって、遠いところから帰って来たばかりで疲れているんじゃないの?」
「大丈夫よ。馬車と電車にずっと揺られていただけだから。別に長距離を歩いたわけでもないもの」
「そうなの?」
「ええ、そうよ。それじゃ一緒に台所に行きましょう」
「う、うん…」
そして私とフレディは一緒に台所へ向かった。
かまどには大きな鍋が置かれて、グツグツと野菜が煮込まれていた。
「フレディ、何を作ろうとしていたの?」
台所の引き出しからエプロンを取り出すと尋ねた。
「うん、今夜は冷えるからホワイトシチューを作ろうとしていたんだ」
「そうなのね?なら早速作りましょう」
エプロンをしめるとフレディに声を掛けた。
「うん、そうだね」
そして私達は並んで料理の続きを作り始めた―。
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