6−8 家族の団欒
すっかり太陽が落ち、星が空に輝き始める頃…ようやく父と弟のダミアンが帰ってきた。
「ただいま」
「ただいまー」
台所で料理を作っていると扉の開く音と同時に懐かしい父と弟の声が聞こえてきた。
「あ、帰ってきたよ!」
フレディが声を掛けてきた。
「ええ、そうね。行くわ」
手にしていたお玉をお皿の上に置くと急いで戸口へと向かった。
「お帰りなさい!」
扉の前で上着を脱いでいる2人に声を掛けながら姿を現すと、父とダミアンが目を見開いて私を見た。
「え?ロザリー?一体どうしたんだ?」
「姉さん!今年は帰省出来ないんじゃ無かったの?」
「それがユーグ様から里帰りして良いと許可を頂いたの」
すると私の言葉に父が少しだけ眉をひそめた。
「え…?ユーグ様が…?」
「はい、そうです」
「そうか…お帰り、ロザリー」
「ただいま、お父さん」
すると父が私を抱き寄せ、頭をそっと撫でてくれた―。
****
その夜は久しぶりに家族団らんの食事だった。4人でテーブルを囲んでの食事。
「うん、やっぱり姉さんの作った料理は美味いな〜」
ダミアンがシチューを口に運びながら私を見た。
「何だよ。半分は俺が作ったんだぞ」
フレディが不満げに唇を尖らせた。
「ああ、そうだったな。フレディは私達の為に食事を作ってくれているから感謝しているよ。料理の腕も大分あがったしな」
父がフレディに向けて笑みを浮かべ…次に私を見た。
「どうだ?ロザリー。学園生活は」
「そうだな、姉ちゃん。俺一度も学校に通った事がないから色々教えて欲しいな」
「うん、俺も聞きたい」
フレディに続いて、ダミアンも言った。そんな2人の様子を父は何処か悲しげな…申し訳無さ気な目で見つめている。
「ええ、いいわよ。教えてあげる。まず今通っている学校だけど…」
私はリーガル学園の事について3人に話し始めた。授業の内容や、寮生活の様子。そして週末だけバイトをしている花屋の話などを3人に話した。
そしそんな私の話を弟たちは興味深げに聞いている。
可愛そうな2人の弟達は貧しさの為に学校に通えた事が無い。そして、女の身でありながら1人、学校に通っている私。その事を思うと弟達に申し訳なくてたまらなかった。
本来であれば学校へ行くべきなのは弟たちのはずなのに…私だけがユーグ様の計らいで学校へ通わせて貰っているのだから―。
****
夕食が終わり、後片付けを終えるとフレディとダミアンは浴室に向かった。そして私は父と居間で食後のお茶を飲みながら、学園生活について話をしていた。
「ロザリー」
和やかな会話の最中…不意に父が神妙そうな様子で私を見た。
「何?」
「学園生活は楽しいと…あの子達に話していたが…本当はすごく苦労しているのではないか?」
「え…?」
突然の父の言葉に戸惑う。
「どうしてそんな風に思ったの?」
「親だから分かるよ。ちゃんと食事は取れているのかい?随分痩せてしまったじゃないか…」
父はまるで全てを見透かしたような目で私を見た―。
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