5-14 臨時のお手伝い

 翌日―


「おはようございます」


9時45分にカトリーヌさんのお店に到着した。すると店の奥からカトリーヌさんが現れた。


「あ、おはよう。ロザリー」


「おはようございます。昨日はパイを頂き、ありがとうございました。とてもおいしかったです。お借りしていたバスケット…お返しします」


頭を下げてバスケットを差し出した。


「本当?口に合って良かったわ」


笑顔で私を見るカトリーヌさん。


「それでは荷物を置いて準備してきますね」


店の奥に行こうとすると、カトリーヌさんに呼び止められた。


「あ、ロザリー。実はね、今日臨時でお手伝いしたいと言う人が来てるの。何でも社会勉強の為に働いてみたいそうなの。でもアルバイト代はいらないって言うのよ。今日はその人と一緒に仕事してくれる?」


「は、はい…分りました」


返事をすると店の奥へ向かった。社会勉強の為に働いてみたい?一体どんな人なのだろう?


首を傾げながら店の奥へ行き…息を飲んだ。


嘘…。ど、どうして…?


「やぁ、お早う。ロザリー」


そこにはエプロンを付けたレナート様が立っていたのだ。


「…」


私は目の前の光景が信じられず、少しの間固まってしまった。


「レ、レナート様…?な、何故ここに…?」


「カトリーヌさんに聞かなかった?今日は1日お手伝いさせて貰う事になったって?」


何故か私に笑みを向けて来る。


「そ、そうですか…。分りました。本日は1日よろしくお願い致します」


強張った表情で私はレナート様に頭を下げた。


「うん、よろしく。僕は何も分らないからロザリーに色々教えて貰えると助かるな」


「いえ…私もまだ数回しか働いていないので、レナート様に教えられるような事は何もありませんので」


目を伏せながら言うと、荷物を置きエプロンを付けた。そんな私を背後からレナート様は見ている。


「それでは…まずじょうろでお花の鉢植えの水まきからするのですが…」


「分った。やって来るよ」


笑みを浮かべながらレナート様は頷くと、じょうろに水を汲むため水道へと向かっていった。


「ふぅ…」


その後姿を、見届けながら…早くも仕事が終わってくれないかと思ってしまった―。



店の奥で本日入荷されたばかりのお花の水揚げ作業作業をしていると、じょうろで鉢植えのお花に水まきを終えてきたレナート様が戻って来た。


「水まきは終わったよ。今ロザリーは何をしているの?」


「はい、これは本日入荷されたお花の水揚げ作業をしております。バケツに入れられたお花を水の中で園芸用ハサミで先端の茎から2、3センチほど上をハサミで切るんです」


「そうか。それじゃ僕もここで同じ作業をやるよ」


「え?」


そ、そんな…。私は少しでもレナート様から離れたいのに…。


しかし、私にはそんな事を言える事は出来なかった。


「はい、それではお願いします」


それだけ言うのが精一杯だった―。











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