第4話
佐藤さんと2人きりでショッピングをしてから数週間が経過したわけだが、彼女はあれからよく俺の家に来るようになった。
緋夏はお兄ちゃん目的で家に遊びに来ているとかなんとか言っているが、本当なのだろうか。
すぐに彼氏の1人や2人できそうな美少女である佐藤さんが本当に俺目的で来ているのであれば泣いて喜ぶほど嬉しいのだが、とても信じられない。
「おい浩太、どうしたんだよ? さっきからずっとなんか難しそうな顔をしてるけど」
そんな事を考えながら学食で京介と一緒に昼ごはんを食べていると、俺の表情を見た京介から話しかけられた。
「前電車の中で痴漢にあってた女の子を助けたって話をしたよな? その子が実は妹の友達だったんだよ」
「えっ、マジ!?」
めちゃくちゃ話に食いついてきた京介に対して俺はそのまま話を続ける。
「マジ、それでその子が最近家によく来るようになったんだけど妹は俺目的で来てるって言ってるんだよ。ただそれが本当なのかなと思ってさ」
「おいおい、ラノベの主人公みたいな展開になってるじゃん。めちゃくちゃ羨ましいんだけど」
「羨ましいって、ただ普通に家へ来てるだけじゃないのか?」
京介は悔し涙を流しそうな勢いでそう俺に詰めよってきた。
「そんなのどう考えてもお前目的で来てるに決まってるだろ」
「そうかな? でも俺は当たり前の事をしただけだし、やっぱりまだ信じられない気持ちが強いんだよな」
「その子にとって浩太は痴漢から救ってくれたヒーローなわけだろ? 俺が女だったら絶対惚れる自信があるわ」
そう力説する京介の言葉を聞いて俺はようやく現状を認識する。
「浩太、末長く爆発しろよ」
そう言い残すと京介は凄い勢いで残ったご飯を食べると、俺の前から去っていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから授業を全て終えた俺だが、今日はサークル活動もバイトも休みなので家へと一直線で帰り始める。
そして家に帰ると玄関にはすっかり見慣れた靴が置いてあった。
「……今日も佐藤さんは来てるのか」
靴を脱いで俺の部屋へ向かっていると、リビングには緋夏と佐藤さんが2人で勉強している姿が目に飛び込む。
「お兄ちゃん、おかえり」
「あっ、浩太さんこんにちは。お邪魔してます」
「ただいま。それと佐藤さん、こんにちは」
そう2人に挨拶すると俺は自分の部屋へと向かって歩き始めていると佐藤さんから呼び止められる。
「こ、浩太さん、今度の土曜日って空いてますか? もし良かったら一緒に映画とかどうかなって思ってるんですけど」
「彩ちゃん、結構大胆に誘うんだね」
顔を真っ赤に染めながらそう話しかけてくる佐藤さんの様子を見ると、俺を意識していると強く感じさせられた。
「そ、その日は何も予定が無いから大丈夫。勿論一緒に行くよ」
京介の言葉を聞いて俺も佐藤さんを強く意識し始めてしまったせいでつい噛んでしまったが、こんな美少女から好かれていると思えば噛むのも仕方のない事だろう。
「やったー、ありがとうございます。また後でゆっくりと詳細については決めましょう」
「オッケー」
そう言い残すと俺は足早に自分の部屋へと足を進めた。
「……佐藤さんから映画に誘われたんだけど。こ、これはひょっとしてデートの誘いって事か」
俺は自室で課題をする予定だったが、映画に誘われた事で頭がいっぱいになり全く手がつかなくなっている。
前のショッピングの時は佐藤さんの事をあまり意識してはいなかったが、今はかなり意識してしまっているのだ。
18年間彼女ができた事が無かった俺に彼女ができるかもしれないと考えると冷静でいられるはずがない。
「もうこんなチャンスは2度と来ないかもしれないし、映画を見に行ったタイミングで思い切って告白しよう」
俺は今度の土曜日、佐藤さんに告白する事を決めた。
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