第3話
「あっ、ごめん。急に友達から連絡が来て急用が入ったから2人で楽しんで」
ショッピングモールに着いた俺達だったが、突然緋夏がそんな事を言い出してどこかへ行ってしまったため佐藤さんと2人きりになってしまった。
「ふ、2人きりになっちゃいましたね。どうします?」
どうしようか少しの間考えた俺は、断られるかもしれないと思いつつもとある提案をしてみる。
「うーん……せっかく来たんだし、佐藤さんが嫌じゃなかったら2人でショッピングする?」
「全然嫌じゃ無いです。むしろぜひ2人で行きましょう」
そんな俺からの提案に佐藤さんは即答とも言える早さで答えてくれた。
「分かった、じゃあ一緒にショッピングしようか」
こうして俺達はショッピングモールの中を2人で巡り始める。
「佐藤さんってさ、何か部活には入ってないの?」
「私は絵を描く事が好きなので美術部に入ってます」
「それは凄いな、俺は絵を描くのがめちゃくちゃ苦手だからマジで尊敬するわ」
最初はいきなり2人きりという事でお互いに緊張していてしばらくは無言で歩いていたが、空気に耐えられなくなった俺から話しかけて適当に雑談を始めた。
「浩太さんは大学で部活とかサークルに何か入ってないんですか?」
「俺は歌うのが好きだから混声合唱サークルに入ってるよ。だからカラオケとかに行くのが大好きなんだよね」
「カラオケってストレス発散になって良いですよね、私も好きですよ」
緊張が解けてきたのか佐藤さんはよく喋るようになっていて、どんどん俺に話しかけてくる。
そんな今の状況に悪い気がしなかった俺もノリノリで話始め、気付けば最初の気まずい感じも無くなっていた。
それから服屋で一緒に服を見たり、アクセサリーショップに寄って佐藤さんが好きなネックレスやイヤリングを探したり、雑貨屋で部屋のインテリアによさそうなアイテムを探したりと、2人でショッピングモール内を色々とあちこち歩き回る。
「そろそろ疲れてきましたし、どこかで休憩しませんか?」
「そうだな、休憩できそうな場所もあるしそうしようか」
俺達はちょうど近くにあったフードコートで休憩する事にした。
「何か甘いものが食べたくなってきたし、クレープ食べない?」
「確かに甘いものが欲しいですね」
早速クレープ屋の前にあるメニュー表を見てどれを注文するか考え始めるが、俺は2択で迷う。
「キャラメルプリンカスタードが美味しそう、でもいちごバナナチョコも捨てがたいし……」
「なら1つずつ買って、それを2人で半分に分けるのはどうですか?」
メニュー表の前で俺が迷っていると佐藤さんはそう提案してきた。
「えっ、いいのか」
「はい、私もちょうどその2択で迷っていたので」
「ありがとう、じゃあ早速買ってくる」
佐藤さんに荷物の管理を任せると早速クレープ屋でキャラメルプリンカスタードといちごバナナチョコを1つずつ注文した。
その際に、半分にして2人で食べられるように紙皿を貰っておく事を忘れない。
「お待たせ、じゃあ食べようか」
「浩太さんありがとうございます」
俺達はクレープをそれぞれ紙皿の上で半分にして、2人で食べ始めた。
「やっぱりクレープは美味しいな」
「そうですね……あっ、お金はどうしましょう」
「そんなの俺が奢ってあげるよ。そんなに高い値段でも無いし」
俺がそう答えると佐藤さんは申し訳なさそうな顔になって口を開く。
「昼ごはんも奢ってもらったばっかりなのになんか申し訳ないです」
「そんなの別に気にしなくていいのに」
罪悪感を感じているらしい佐藤さんにそう声をかけるが、その表情は晴れない。
「あっ、じゃあ緋夏の誕生日プレゼント選ぶのを手伝ってくれないか? 俺のプレゼントは毎回あんまりセンスが無いって緋夏からも言われてるから困ってたんだよ、クレープのお礼って事でさ」
近々緋夏の誕生日がある事を思い出した俺は佐藤さんにそう声をかけてみた。
「浩太さんは本当に優しいですね。分かりました全力で手伝いますから」
どうやら罪悪感を感じさせないようにするために恩で返させる作戦は成功したようだ。
クレープを食べ終わった俺達は再び2人でショッピングモールを巡り始める。
「緋夏って、どんなプレゼントをあげたら喜ぶと思う? 友達的な目線で見るとさ」
「うーん、最近お菓子作りにハマってるって言ってたから個人的にはエプロンみたいな実用的な物をあげたら喜びそうな気がします」
家で普段緋夏が身につけているエプロンは地味なデザインだった記憶があるので、緋夏が好きそうなデザインのエプロンをプレゼントすれば喜びそうだ。
「よし、じゃあエプロンにしよう」
俺達は早速エプロンが置いてある店舗へ行き、緋夏が好きそうなデザインの物を探し始める。
「この花柄のエプロンとかどうでしょう?」
「うん、よく似合ってるよ」
「……ありがとうございます。って、そうじゃなくて緋夏ちゃんに似合うかどうかですよ」
赤い花柄のエプロンを身につけた佐藤さんの姿があまりにも似合っていたため、つい誉めてしまった。
顔をほんの少し赤らめた佐藤さんからそうツッコミを入れられるまで本来の目的を忘れていたほどだ。
「多分緋夏はこっちの方が好きそうな気がするんだけど、どう思う?」
俺は黒猫がプリントされたエプロンを手に取った。
「そう言えば猫が好きだって言ってましたね。これなら喜びそうな気がします」
「よし、じゃあこれにするか」
俺は黒猫がプリントされたエプロンをレジに持っていく。
その際に佐藤さんは赤い花柄のプリントされたエプロンを手に持っているのが目に入る。
「そのエプロンも買うの?」
「はい、せっかく浩太さんから似合ってるって言われたので買うことにしました」
さっきの事を思い出したのか、佐藤さんは顔を赤らめてエプロンをその手に握りしめていた。
俺達はそれぞれ別々に会計を済ませると店を後にする。
「もうすぐ夕方だし、そろそろ帰ろうか」
「そうしましょう」
こうして俺達の2人きりのショッピングは終わりを迎えた。
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