第2話

 あれから数日後の休日俺は緋夏の友達で、俺があの日痴漢から助けた女子高生である佐藤彩さとうあやと再会した。

 佐藤さんはわざわざ菓子折りまで持参して家きており、なんだか申し訳ない気持ちにさせられている。


「緋夏ちゃんのお兄さん、あの時は助けていただいてありがとうございました」


「いやいや、あの時も言ったと思うけど俺は当たり前の事をしただけだから」


 美少女からお礼を言われ悪い気がしなかった俺は顔がにやけそうになるのを必死に我慢しながらそう答えた。


「彩ちゃんはクラスでお兄ちゃんの事を白馬の王子様とか、かっこよかったとか言ってたよ。お兄ちゃんもモテモテだね」


「も、もう緋夏ちゃん。それは緋夏ちゃんのお兄さんには言わないでって言ったでしょ!」


 佐藤さんは顔を真っ赤にして慌てた様子で緋夏に抗議していたが、めちゃくちゃ可愛らしく見惚れてしまったのは内緒だ。


「それでこれからどうする。もうすぐお昼だし、どこかご飯でも食べにいくか?」


「賛成、彩ちゃんも一緒に行こうね」


「分かった、一緒に行くよ」


 俺達3人は家の近くにあったファミレスに行くことにして早速徒歩で移動を始める。


「緋夏ちゃんのお兄さんってどこの大学に通ってるんですか?」


「俺は平成へいせい大学の経済学部に通ってるよ。後緋夏ちゃんのお兄さんって呼びにくいだろうし、浩太でいいよ」


 平成大学経済学部は河村かわむら塾の出している偏差値62.5ある、一応世間一般的には難関私立大学の一つだ。


「分かりました、浩太さんって呼びますね。それより平成大学って凄いですね、通りで頭良さそうに見えました」


「いやいや、補欠合格でギリギリ入学しただけだから別に大した事は無いよ。それに第一志望の早穂田わほだ大学と慶欧けいおう大学は落ちたからな」


「それでも凄いですよ。私も平成大学とか学習館がくしゅうかん大学、真中みなか大学辺りを狙っているのでめちゃくちゃ尊敬します」


 佐藤さんは俺について興味津々なのかめちゃくちゃ色々な話をふってきた。

 そんな俺達の様子を緋夏がニヤニヤしながら見ていて少し殴りたい気持ちにさせられる。

 だがどんどん話しかけてくる佐藤さんの相手をする事に忙しくてそんな暇は無さそうだ。

 それからしばらくしてファミレスに到着した俺達はメニューを見始める。


「今日は俺が奢るから好きな奴を食べてくれて大丈夫」


「やったー、ありがとうお兄ちゃん」


「そんな、悪いですよ……」


 緋夏と佐藤さんは完全に真逆の反応を示していて、性格が出ているなと感じた。


「大丈夫、バイトして稼いでいるから奢るお金くらいはあるからさ。後緋夏はもう少し遠慮をしろよな」


 そんな事を言いつつ、それぞれメニューを注文した俺達はドリンクバーの飲み物を飲みながら雑談を再開する。


「浩太さんってなんのバイトをやってるんですか?」


「お兄ちゃんはこの近くのコンビニでバイトしてるよ」


「そうそう、週2で夜のシフトに入ってるから結構朝とか眠いんだよな」


 実際に痴漢のあった日の前日もバイトのシフトに入っていたので、あの朝も実は結構眠かった。


「……私も今度浩太さんに会いに行こうかな」


 隣に座っていた佐藤さんが小さな声でそんな事をつぶやいていたのが聞こえてしまったが、 聞こえなかったふりをしてそのまま会話を続ける。


「そう言えば彩ちゃんって身長は何cmくらいあるんだ? 俺とあんまり変わらない気がするけど」


 171cmある俺とほとんど身長が変わらない事が気になってそう質問してみた。


「この間の健康診断で身長を測った時は170cmでしたけど……もしかして変ですか?」


「あっ、お兄ちゃんが変な事を聞いたから彩ちゃんが辛そうな顔になったじゃない」


 やばい、うっかり佐藤さんの地雷を踏み抜いてしまったかもしれない。

 少し悲しそうな表情を浮かべている佐藤さんに対して、俺はすかさずフォローの説明を入れる。


「いやいや、俺は身長の高い女の子が大好きだから全然変だとは思わないよ」


「本当ですか? 良かった……」


 俺は昔から身長の高い女の子が好きなので、口から出まかせというわけではない。

 実際に昔好きだった人も身長165cmくらいと、女性としては長身な部類に入るわけだし。

 とにかく佐藤さんは安心したような表情を浮かべているため、俺の上がっていた株が急落する危機は去ったようだ。

 そんな事を考えているとちょうど料理が運ばれてきたので俺達3人は仲良く食べ始めた。

 そして食べ終わったところで緋夏がとある提案をしてくる。


「ねえ、3人でこれからショッピングに行かない? あっ、お兄ちゃんは勿論荷物持ちね」


「荷物持ちってところは気に食わないけど、どうせこの後は何も予定が無いから付き合うよ」


「……私もショッピング行きたいです」


 俺は即答し、佐藤さんは少しの間考えるような素振りを見せていたが結局は賛成の声をあげた。

 俺達の返答を聞いていた緋夏は満面の笑みを浮かべて口を開く。


「よし、じゃあ決まりだね。近くのショッピングモールに行こうよ」


「そうだな。あそこなら何でも揃ってるしそうしようか」


 こうして俺達は3人でショッピングセンターへ行くことが決定した。

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