第8話
なんとなく、なんとなくだけど杉原との距離は埋まっている気がする。
二人でい行く図書館は心地がよい。
いつも作ってくれるお弁当も、嬉しそうに持ってきてくれる。
よく考えてみれば、これまで女とは付き合ってきたが、お弁当を作ってきたのは杉原がはじめてかもしれない。
それから、図書館に付き合ってくれるのも。
優太を思い出す。
でも、優太とはまた違うような気がする。
優太も大好きだった。
でも優太を思う好きとは違う気がする。
「星司?どうかした?」
「いや、なんでもない。」
「あ、そう?なんか嫌いなものいれちゃってたのかと思った。」
ふわりと笑う杉原を見て口角が上がりそうになる。
「最近ちょっと笑うようになったかもね」
杉原はさらに嬉しそうに笑った。
僕は嫌じゃなかった。
「星司、お前最近楽しそうじゃん」
「そうか。」
「夏来さんのおかげだね。」
月哉もそう言ってくれた。
***
「星司、明日ひま?」
杉原がそわそわした様子で僕のところに来た。
僕はなにも言わずにただ頷いた。
それを見て杉原は少し笑った。
「姉ちゃんの子供がこの間生まれたばかりなんだ。
一緒に見に行こうよ」
僕はそう誘ってくれたことに嬉しさを感じつつ、少し戸惑いを感じた。
「僕が一緒に行ってもいいのか?」
真っ先にそれを思った。
家族とは全く関係ないのに、僕はお邪魔していいんだろうか。
そんな雰囲気を杉原は感じ取ったのか、杉原は僕の手をとった。
「星司だから一緒に行きたいんだけど」
杉原の笑顔に、僕は弱い。
「女の子になんだって。
先月生まれたばかりなんだけど、やっといろいろ落ち着いたから遊びにおいでっていってくれたからさ。」
嬉しそうにそうゆう杉原の顔を見ていたら、なやんだ僕が少しだけ馬鹿らしくなった。
「じゃあ、お邪魔させてもらう」
「やった!!」
少しずつ、少しずつ。
杉原のことがわかっていく。
一緒にいるだけで、居心地がよい。
自然と、自分の中から言葉が溢れてくる。
それが恋人と共にいることであると、僕はその時はまだ気づいてはいないのだけれど。
「お姉さんとは年離れてるの?」
「6つ違い」
「そうなんだ。僕の一番下の弟もそんくらい離れてる気がする。」
「え、兄弟何人いるの?」
「弟が3人、妹が1人。二番の弟と妹は双子なんだ。」
初めて自分のことを自分から喋った。
杉原はそれを楽しそうに聞いてくれていた。
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