第7話
付き合ってから早数週間。
杉原は度々お弁当を持って僕の前に現れた。
杉原の料理は何でも絶品でびっくりした。
「美味いな。」
僕が誉めると嬉しそうに笑った。
クラスの人たちは、なんで僕と杉原が仲良くなりだしたのか気にした。
でも、僕も杉原も本好きで、最近ずっと本の貸し借りをしていたから多分それ繋がりだと思っているだろう。
「明日はおかず何がいい?」
「なんでも。」
「じゃあ明日は和食にする」
機嫌よくお弁当箱をしまう。
そんな杉原の姿に、クラスの女子からの視線が集まる。
そのなかには、明らかに杉原をねっとりとした視線で見る女子もいた。
なぜだか僕はそれが気にくわなかったし、杉原も珍しく冷ややかな目でそちらを見ていた。
「ね、あの子達俺を見てるの?それとも青柳を見てるの?」
「・・・・さあ?」
「ふーん。」
さっきまでの上機嫌はどこへいったのだろうか。
それから、その視線を見つける度に少し都合の悪そうな顔をした。
でも、それは多分僕しか気づいていない。
僕も僕で嫌だった。
なんでか理由はわからない。
日がたつ度に嫌な気持ちは大きくなった。
「もう言っちゃおっか。」
「は?」
「青柳は俺と付き合ってるんだって。」
「好きにすればいい」
「だってなんかやだ、あの視線。」
杉原はなんでこんなにストレートに気持ちを言えるんだろう。
クラスが違うから、会うのは昼休み位だった。
大体は杉原が僕のクラスに来る。
だから、僕のクラスの女子はかなり緊張な面持ちだった。
そんなある日の休み時間だった。
クラスメイトの一人がこれはニュースだとばかりに教室に飛び込んできた。
「京極が杉原を廊下に呼び出したぞ!絶対告白だぜ!あれ!!」
京極・・・・京極遥は杉原と同じクラスの女子だった。
最近、理由をつけてはわざわざ昼休みに僕のクラスへ足を運んでいた女だった。
教室はざわついている。
ミーハーな男女が教室から廊下を覗いている。
僕はそれを聞いて無意識に席をたった。
野次馬たちの間をくぐり抜けて、それから早歩きで廊下を出た。
「夏来!!」
そして慌てて少し先にいる杉原を呼んだ。
しかも、今まで出したことのないような大きな声で。
杉原を慕う人たちが呼ぶ愛称で。
京極がこちらを振り向いた。
邪魔をするなと言わんばかりの形相だった。
廊下はなにも知らずに往来する人と、教室のドアから覗く野次馬でそれなりに人が多かった。
僕は近づく。
そして杉原の手を引いた。
ついでに京極を睨み付ける。
(・・・・・あいつ男なら誰だっていいんじゃないのか?)
僕は半年前京極に告白されて断ったばかりだった。
杉原は引っ張られてびっくりしたのか足がもたついていた。
野次馬たちは何を感じたのか、それぞれ散っていった。人通りはなくなったいた。
廊下の突き当たりまで来たところで僕は足を止めた。
「無理なんだけど。」
杉原の方を見ずに、僕は言った。
杉原がどんな顔をしていたかわからない。
でも、僕は気づいてしまった。
「杉原を見る女の目が。」
女に嫉妬している。
そんな自分に嫌気がさした。
ちらりと杉原を見た。
顔が真っ赤になっていた。
それを見て、自分の行動が急に恥ずかしくなった。
それから杉原が飛び付いてきた。
ぎゅっと僕を抱きしめた。
「馬鹿じゃないの!?お前!!」
僕はぎゅっと抱きしめかえした。
嫌じゃなかった。
むしろ心地よかった。
思わず口角が上がった。
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