第2話
女と別れた次の日放課後。
また別のクラスの別の女に呼び出されて教室いた。
そしてまた同じように告白をされ、同じように断ったら、女は同じように真っ赤な顔をして走って出ていった。
「うわぁぁ!」
そしてまた聞き覚えのある声。デジャヴ。
「まじで昨日からなんなんだよ!!?」
その言葉を僕はそっくりそのまま心の中で呟いた。
廊下に出ると、突き当たりでぶつかったらしい。
尻餅をついたようで顔をしかめている。
「杉原!!なんでアンタがここにいるのよ!?」
「お前こそなにしてんだよこんな時間に!?」
杉原は顔を上げた。
目が合った。
「あれ、青柳君じゃん。もしかしてお前もフラレ虫??」
そう言われた女は真っ赤な顔をして杉原を突き飛ばすと走って行ってしまった。
「デジャヴなんだけど。てゆーかあれ、朝比奈さんじゃん。結構男子に人気らしいよ。」
杉原はそう言って立ち上がった。
それからA組の教室へと入っていった。
それから荷物持って再び廊下に出てきた。
僕は疑問だった。杉原こそ、なぜこの時間に教室にきたのだろうか?
「帰らないの?」
杉原はにこりと笑う。
僕はその態度に違和感を覚える。
なんで僕にそんなふうに笑かける?
「図書室寄る。」
ぶっきらぼうにそう答える。
それでも嫌な顔をせずに言った。
「そっか。じゃーね!」
昨日と同じように元気に手をふって別れた。
なんだろう、自分の知らない世界があるような感じがする。
それから世界を崩されていくような気がする。
気を許したらいけない。絶対に。
僕は心の中で呟いた。
***
そもそもの僕の無口の性格を形成したのは小学生の時だった。
僕は幼い頃から本が好きでおとなしい性格であった。
それでも当時、僕はとても仲良しだった男の子がいたんだ。
その子とはよく喋ったしよく笑った。
ときどき喧嘩もするけど、大親友で、僕はその子が大好きだったんだ。
その子の存在が、僕の存在価値を作っていたと言っても過言ではない。
僕が許される場所が、そこだと思っていたんだ。
別に、誰かに笑うなとか怒るなとか言われた訳じゃないけど、自分が自分でいられる空間がその子の隣だったんだ。
しかしある時、その子は帰らぬ人となっていた。
それは本当に突然の出来事だった。
『星司、優太くんはね、もういないのよ』
母が泣きながら僕にそう言った。
あのときの母の顔は一生忘れないと思う。
涙でぐしゃぐしゃの母の顔をみて、それは嘘じゃないとわかった。
その子は電車の脱線事故に巻き込まれ、亡くなってしまったのだった。
僕にとっての笑う場所はその子の隣だった。
僕にとっての泣く場所もその子の隣だった。
僕は、自分の感情のやり場をなくした。
それからずっと、顔に出なくなったし、別に何もかもがどうでもよくなった。
少しずつ友達も減った。
減ったと言うか減らしたといっても間違いではないと思う。
また、何かの拍子に大切な人を失ってしまうんじゃないかとゆう怖さが僕をそうさせた。
僕は僕の居場所を失った気さえした。
だから僕はひとりのままでいい。
そう、感じるようになっていたのだった。
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