第104話 本音

静かな場所で詳しい話を聞きたいとアカツキの父親に連れられて見るからに高級な店に全員が連れてこられた

個室に案内されて全員席に着く

店に着くまでの間、アカツキは死んだ魚のような目で下を向いていたが個室に入り座った全員の視線がアカツキに集まり泣きそうな顔をしている

「アカツキ、嘘は許さん お前、何をした?」

アカツキ父が目を細くして強い口調でアカツキに問い掛ける

「と、父さん… お、俺は何もしてないんだ!」

父親に向かって必死に訴えかけるアカツキ

こいつ…

こんな場所に来ても逃げる気か

そんな事は俺は許さない

「口を挟んでしまってすいません、ですが一つだけ言わせて下さい」

全員の視線が俺に集まったので一言言わせてもらう

「何もしてなかったらサーシャさんがアカツキさんが話す度にビクビクと怯えるわけないじゃないですか! 明るく元気なサーシャさんを返してください!」

Lineについては俺はあえて触れないでおく

俺が見たって知ったらどうなるか分からないからだ

「俺は何もしていない! サーシャちゃんからも何か言ってくれ!」

サーシャさんがスッと俺の後ろに隠れてブルブルと震える

「サーシャ君、何があったか教えてくれないか? 頼む!」

アカツキ父が頭を下げる

それを見た俺は後ろのサーシャさんの頭を撫でながら言う

「ほらサーシャさん、何があったのか話して下さい」

それを聞いたサーシャさんが少し顔を横に出してアカツキ父に言う

「私とアカツキさんのLINE内容を見て下さい」

それを聞きアカツキ父はアカツキさんの前に手を出す

「アカツキ、LINEを開いて見せなさい」

「父さん!俺は何もしてない!信じて下さい!」

アカツキはスマホを抱え込む

「何もしてないなら見せられるだろう?見せなさい」

アカツキが詰め寄ったアカツキ父にスマホを取られLINEの内容を確認して声を上げる

「アカツキ、この文章を読め」

そう言ってアカツキにスマホの画面を見せられて震えた声で内容を読み始める

「ねえそろそろ付き合おうよ ちなみに断ったらVライバーに迷惑をかける事になるかもしれないよ? 俺の父親がVダンの社長なのはこの前教えたよね? どうかな? 付き合ってくれるよね?」

それを読み終えた瞬間アカツキはアカツキ父によって殴り飛ばされる

「アカツキ、これは脅しだ! 私の社長の立場をこんな事に使うとは…

サーシャ君、すまなかった 私の息子が君に迷惑をかけ、心にも傷を負わせてしまった」

「サーシャちゃん、ごめんなさい」

アカツキ父はその場で土下座をして謝罪しているのを見てアカツキも並んで謝罪する

その土下座を見てサーシャさんが口を開く

「2人とも顔を上げて下さい」

2人が顔を上げるとサーシャさんが続けて話す

「今でもアカツキさんが怖いです 

Vtuberを引退も考える事もありましたでもそんな時にタルルちゃんが私に手を差し伸べてくれてこんな機会まで用意してくれたのでここではっきり言います!

アカツキさん 私は貴方のように権力を振りかざすような人は絶対に好きになることはありません! 今後は私に関わらないでください! それだけが私の望みです」

サーシャさんがついに本音を口にした

「それだけでいいのかい?」

アカツキ父は驚く

自分を引退近くまで追い込んだ相手への要求にしては軽すぎる気がする

「はい」

頷くサーシャさんを見た後にアカツキ父は薫子さんを見る

「もしこの子達に何かあった際、Vダンのお力を貸してあげてくれませんか?」

薫子さんがアカツキ父に頼む

アカツキ父は再び土下座をする

「Vライバーに何かあった際はVダンが全力で支援させてもらいます! そしてアカツキは今後サーシャさんに関わりません! この度は本当に申し訳ございませんでした」

「今後はサーシャちゃんと関わりません… すいませんでした」

こうしてサーシャさんを救う事に成功した

「すいません、食事を運んでもよろしいでしょうか?」

店員さんが扉を少し開けて聞いて来た

多分気を遣って外で待って中の状況をうかがっていたのだろう

それからみんなで高級食を食べて解散するのだった

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