第79話 タルルの家庭事情

シノさんの普段見せない可愛い発言に全員が発狂した後、気を取り直し作業を再開し生地を作り終わり型抜きも終えた

残るは焼く作業だけ

「最後にオーブンに入れるんですが家庭用のオーブンなので全部は入らないから2回に分けますね、時間かかるのでおしゃべりしましょうか」

3人のクッキーの生地を半分ずつ網に乗せてオーブンで焼き始める

「これで焼きあがれば完成かー、お菓子作りって面白いね! 今度家でもやってみようかな、家族に作ってあげたい!」

「ナユたんが親孝行を!?大人になったね…」

ナユタさんの言葉にマナさんが泣く

「マナ!?私はいつだって親孝行してるんだけど!?みんな本当だよ!?」

「さっき家事全般未経験って言ってなかった?どんな親孝行してるの?」

シノさんがナユタさんに追撃をいれる

「そ、それは…」

ナユタさんが言葉を詰まらせる

ここはフォローしとくか

「ナユタさんは居てくれるだけでみんなを癒やしてくれますから、きっとご家族もナユタさんに助けられてるんじゃないですかね?」

俺の言葉に場が静まり返る

全員の視線が俺に集まる

「あ、あの 私、何か変なこと言いました?」

全員が首を振る

「違うの、タルルちゃんは本当に良い子だなって」

マナさんが微笑みながら言う

「うん!タルルちゃん、私をフォローしてくれてありがとうね!」

ナユタさんが俺の手を握りながら言う

「タルルのご両親はきっと鼻が高い」

シノさんのその言葉に俺は言葉を閉ざす

そんな俺を見て雫姉が話し出す

「みんな、言ってなかったけど私達の両親はもういないの」

「え…」

「そんな…」

「その…ごめんなさい」

シノさんが泣きそうな顔で謝ってくる

重い空気になってしまった

「いえ!シノさんが謝ることないですよ!確かに両親は居ませんが私にはみんなが居ますから大丈夫です!」

「タルルちゃん… 私達は貴方の味方だから」

マナさんが俺を優しく抱きしめる

「ご両親に代わって私達がタルルちゃんを守るよ」

そこにナユタさんも加わる

「私達は一蓮托生」

シノさんまでも加わる

「みんなありがとう… これからも妹をよろしく…」

雫姉が泣きながら話す

「お姉ちゃん… こっちきて」

一人でいる雫姉を呼ぶ

「来たよ? わわ!く、苦しいよ」

近づいてきた雫姉もハグに巻き込む

「みんな大好きです」

両親が居なくても俺たちにはみんなが居てくれるなんて心強いんだ…

全員でハグをしているとチーンとオーブンが鳴る

「ちょうど、焼き上がりましたね 

クッキー確認しましょう!」

ハグをやめて全員でオーブンの中を確認するのだった

後にこのやり取りが切り抜かれてバズるなんて、この時は想像もしていなかった

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