第57話 タルルへの手紙

タルルの無期限活動停止を発表してから数日が経過した

俺はというと、この数日間に何かをする気にもなれずただ引きこもっていた

そんな俺に雫姉は何も言ってこない

今日は土曜日、流石にそろそろ外の空気を吸いたくなり外に出た

行く宛などなくただぶらぶらと街を歩く

アニメやゲームのキャラクターを多く取り扱う店の前を通った時のことだ

女の子2人が話しているのが聞こえてきた

「私たちのメッセージ届くといいね」

「うん、絶対に帰ってきて欲しい! 

私の最推しだもん!」

「しかも演者勢揃いとか見逃せないよね」

「楽しみだなー」

凄くキラキラした笑顔で語る2人

何のことかは分からないけどそれだけ夢中になれることがあるのは羨ましい

少し前までの俺もあんな感じだったのだろうか…

その2人の横を通り過ぎた

それからゲームセンターに行ったり本屋に寄って家に帰った

家に帰るとリビングのテーブルに大きな段ボールが3箱も積まれている

雫姉が何か通販で買ったのか?

それにしては多すぎる気がする

「雫姉、ただいま」

キッチンで調理している雫姉に声を掛ける

「瑠夏お帰り、テーブルの上の段ボールは瑠夏宛ての物だからね」

俺宛?何が届いたんだ?

俺は1番上の段ボールから開けることにした

段ボールの中には大量の紙と手紙の封筒で溢れかえっていた

1番上にある手紙の封筒を手に取り封筒を開ける、中には2枚の紙が入っていた

1枚目を広げて読む


タルルちゃんへ

私は高校1年生のタルルちゃんのファンです

入学してから私は1人ぼっちでした

そんなある日、タルルちゃんがデビューをし、その日から毎日のタルルちゃんの配信が私の楽しみになりました

何をするにも全力で取り組むその姿勢にいつも元気を貰っていました

学校でタルルちゃんの動画を見ているとクラスの人が私に話しかけてきてくれるようになり、今では友達ができました

タルルちゃんは私に多くのものをくれました、そんなタルルちゃんがスランプになりVtuberをやめるかもという話を聞いた時には驚きと悲しさで泣きそうになってしまいました

お願いします、Vtuberをやめないでください タルルちゃんが挫けそうになった時、私達リスナーがタルルちゃんを支えます

またタルルちゃんの笑顔が見れるのを楽しみに待っています


丁寧に手書きで書かれた手紙を読み終えてもう1枚の紙を確認する

そこにはにはタルルの似顔絵とその下にタルルちゃん大好きという

メッセージが書かれていた

なんだよこれ…

俺は他の紙を次々と読み進める

タルルへの感謝と激励の言葉に溢れた手紙に俺は涙を流しながら読み進める

そんな中にはタルルに憧れて自分も

Vtuberになりたいと言ってくれる人まで多く居たしVライバーの演者の人からの手紙まであった

1箱目の段ボールの手紙を読み終えると時間は19時になる寸前であった

「瑠夏、みんなの気持ち伝わった?」

いつの間にか横に座っていた雫姉が聞いてくる

「みんなこんな風に思ってくれていたのに… 俺…」

自然と涙が溢れてくる

「瑠夏、これを見て」

雫姉がリモコンを操作してテレビの電源を入れる

画面にはYouTubeの生放送の準備中の画面が映る

「生放送?誰の?」

「すぐに分かるよ」

準備中の画面から放送の画面に切り替わる

「みんな今日はこの放送に来てくれてありがとう! 現在10万人の人がこの放送を見てくれてるみたいでみんな驚いているよ!」

映し出されたのはVライバーに所属

している演者の全員だった

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