第2話
コケコッコーーーーー
鶏の鳴き声で目が覚める 現代日本の都心に住んでいた身としては初めての体験だ。しかし良い朝だ、天気も良いし空気も美味しい、今日はピクニックでもしたい気分だと思いながら気分よく起きると目の前に少女が立っていた。
「うわーーーーー」
「おはようございます! 広場で村の皆がお待ちしております。」
それじゃあ起きなきゃな。しかしなぜ広場に集まっているんだろうって皆の前で能力を見せるんだった...
今フィティナに能力がないって言った方がいいかな、今ならギリギリ許される気が
「私ヒズル様の能力を見るの凄い楽しみにしているんです!」
よし開き直ろう もう能力のことは考えても仕方がない
「俺も披露するのが楽しみだよ きっと驚くよ」
逆の意味でね
「はい! あと朝食が用意してあるのでどうぞ 大したものでは無いのですが...」
「いや 用意してもらうだけ嬉しいよ ありがとう!」
この世界に来て初めての食事だな、朝起きて美少女にご飯を用意されてるなんて前の世界だったら絶対ありえなかったなと思いながら椅子に座り、テーブルを見ると茶色いパンとお肉と野菜が入ったスープが置かれていた。
俺が生きていた世界の中世のヨーロッパの時代とこの異世界が同じような生活スタイルだと考えるとお肉は貴重なものだった気がするし、果物もあんまり取れないと思うからなんだか申し訳ないな。
「いただきます!」
普段はしないけど用意してもらったので一応挨拶をすると気になったのかフィティナが話しかけてきた
「その言葉ってどういう意味なんですか?」
「俺が住んでいた国の食べる前の挨拶でね、確か食材と作ってくれた人への感謝の言葉だよ 宗教的な意味はないよ」
「そうなんですね 私たちは神様にただ祈るだけでそういう習慣が無かったので凄い不思議に感じますね」
確か日本人以外でもこういう習慣はないらしいから異世界だと更に珍しいだろうなと考えてるとグーーとお腹のなる音が部屋に響いた。
「そういえばフィティナは朝食は食べたの?」
「いえ お腹が空いてないので大丈夫です」
ダイエット中の女子高生みたいな言い訳だな。
「そんなこと言わないで一緒に食べよう 俺も朝はそんなに食べるわけじゃないし半分に、分けよう 1人で食べるより二人で食べた方が美味しいよ」
「そこまで言うなら御一緒させていただきます」
そしてフィティナは俺の前に座ったので皿に取り分けてあげた
「あの先程の言葉って神様に感謝を伝える場合でも使えますかね?」
うーんそこまで深く考えたことないけど日本はどんな宗教にも寛容な国だし多分問題ないだろう。
「大丈夫だと思うよ」
「それじゃあ私もこれから使わせていただきます。私たちは普段手を合わせて神様に祈るだけなのでこちらの方が感謝を伝える気がして好きです!」
なんかこうやって自分の国の文化が伝わると異世界転生って感じがするな。
そのうちマヨネーズや役に立ちそうな道具とかも教えてあげたいな。
「じゃあ挨拶もしたし食べようか」
目の前に置いてあるパンを食べると甘みは無いが、焼きたてだったため香ばしく、とても美味しく感じた。
次に木のスプーンを手に取り、スープを飲むと野菜の甘みと動物の肉の旨みが感じられて、見た目は貧相だが普段食べている食事と変わらない気がする。そのままスープを飲み進めていると疑問が湧く、この肉はなんの肉だろう牛肉でも豚肉でもないし、この世界しかいない動物の肉かな。
目の前でパンを頬張って食べているフィティナに聞いてみる
「このスープに入ってる肉って何の動物のお肉かな?」
「これはデモドンっていうモンスターのお肉ですよ 見た目は馬と鹿が混ざったような見た目をしていて、簡単に捕まえられるから今全然数が少ないです」
なんだそのドードーのような生き物は、でもやっぱりモンスターが普通に生息しているのか、後でそのことについてもゆっくり聞かせてもらわないとな。
その後は1人分の量を二人で分けたことで短時間で食べ終わった。
「ごちそうさまでした」
「食べ終わった後の挨拶もあるのですね それはどんな意味ですか」
うーんあまり良く考えたこと無かったな
「今食べたものが糧になってくれたことへの感謝だったかな」
「なるほど! わざわざ言葉を出して感謝するなんて素晴らしいですね こちらもやらせていただきます。」
「まぁ俺は習慣となってるからやってるだけであんまり意識してやってる訳じゃないけどね」
「意識せずに毎回感謝しているなんてさすがは救世主さまです!」
こんなことで救世主なら日本人皆救世主だよ..
ドンドン ガチャ
そんなことを思っているとドアがノックされ若い男が入ってきた
「失礼します フィティナ、救世主様の準備は済みましたか?」
「ヒズル様もう大丈夫ですよね ?」
「あー 大丈夫だ 問題ない」
その言葉を聞いて若い男は頭を下げ部屋を出ていく
「では行きましょう ヒズル様」
俺はその声を聞いて覚悟を決め村の人達が集まっている場所にフィティナと共に向かった
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