第2話 異世界から来た魔法使いとチート技

 俺は防犯カメラで確認するとその男は20代後半ぐらい、ちょい悪なイケメンという感じで、誰かを探しているような様子だった。


 そして、その男を「取り押さえよ!」という命令が出たので、俺はやつを捕まえに行った。

 

 その時の俺は余裕で捕まえる自信があった。


 なぜなら俺には、組織が開発した身体能力を、瞬間的に上がるチート技が使えるからだ。


 この技は組織が開発した『MPCシステム』という薬品、マルチパワーコントロールシステムの略だ。


 これを一度飲むだけで、全身にある力『パワー』と、全身の強度『剛性』が、コントロール出来るようになる。


 例えば、強力なパンチを打つ場合、全身の力『パワー』を腕に『集中』させ、拳に強度『剛性』を『集中』させる事で、岩も砕く、強力なパンチが打てる。


 さらに、速く走る場合、蹴り上げる瞬間に、右足に『パワー』を『集中』させ、次に左足交互にタイミングよく合わせると『高速移動』が出来る。


 しかし! この『MPCシステム』にも欠点がある。


 一箇所に『パワー』と『剛性』が集中するので、他の部分はスカスカになってしまい、そこを攻撃されれば、通常より大きなダメージを受ける事になる。


 また、『高速移動』の場合、左右のタイミングが狂えば、ド派手に転倒するのでコントロールが難しい。


 そのせいで、マスターしたのは俺だけだ。これ以外にも凄い技があるが、身体の負荷が重く危険な技の為、現在禁止されている……。

 

 まぁ、そういう事で俺には、やつを捕まえる自信があったというわけだ。


 だがしかし、このMPCシステムの高速移動を以ってしても、やつにはあっさりと逃げられてしまった。


 

 普通の人間ならまず負ける事はないMPCシステムだけに、この時は本当にショックだった。今なら魔法使い相手なら仕方がないと思えるが。

 

 しかし、それでも諦めなかった俺は、この辺りの地理はよく知っているし、人目を避ける逃げ方や、逃げた方向から進路を予想し先回りを試みた。

 

 俺が先回りした場所は、コンテナがいっぱいある港の倉庫で、この辺りで人気のない場所はここだけだ。


 そして、しばらくすると、俺の予想通りにやつが現れ、もう安心したのか普通に歩いてやって来た。

 

 ここで追いつめれば、やつの逃げる方向は海しかなく、捕まえれると考えた俺は組織に連絡して、やつの後ろ側から声を掛けた。


 すると、やつは慌てた様子で振り返り、周囲を見渡した後、観念したのか落ち着きを取り戻し、ゆっくりと俺の方を見た。



「まさかこの俺が追いつめらるとはなぁ。しかもお前は魔法を使っていない。魔力を全く感じなかった」



 何を言っているんだこいつは? っとその時は思ったが、今ならそのセリフも理解出来る。

 

 でも、やつの格好は高かそうなスーツを着ていて、魔法使いという感じは全く無かった。


 だから、俺はツッコミに近い感じで問い詰めた。



「お前は誰だ? 目的はなんだ? 魔法ってふざけてるのか?」

「次会うことがあったら教えてやるよ。じゃあな!」



 それだけ言い残すと、やつの周りから白いオーラーみたいのものが発せられ、やがてそれが急激に強くなり、一瞬で視界が奪われた。


 そして、視力が戻った時には、やつは消えていた。


 

 こうして、翌日俺は美少女になった……。


 とは、ならないよな? ファンタジックな事はあっても、美少女の要素は全く無かった。

 

 となると、この後の出来事が関係してくるのだろう。


 俺はこの件を、どう上に報告するか悩んでいた。

 

 だって、正直に「消えました」と報告しても、信じてもらえないし、無難に「不意を突かれて逃げられました」と、言った方がいいのかを考えていた。


 しかし、結論が出ないまま、組織内にある司令官がいる部屋の前まで来てしまい、その場の状況で決める事にした。


 そして、部屋に入ると中に居たのは、和田司令官と、俺の同僚と後輩、あと誰か分からないが、20代後半ぐらいでジャージを着ていた爽やかなイケメンだ。


 でも、いくらなんでもラフ過ぎるだろ! 俺は、このジャージ男を『組織』の人間ではないと感じた。


 和田さんは45歳の男性の上司で、スポーツ選手のような体格で、その上クール。俺の事をよく気にかけてくれるし、尊敬出来る人だ。


 そして、同僚である戸田無垢朗とだむくろうは、身体能力を上げる薬剤担当で、MPCを開発した凄いやつだ。


 ただ、美少女大好きで、研究室にはフィギュアが一杯ある。


 続いて、俺の後輩で、無垢朗のサポータの有山あいみだ。

 あいみの教育担当もやっていた事もあって、今でもよく絡んでる。


 まだ19才で、小さくて可愛い美少女だ。

 スーツを着ていても、女子高生に見えてしまう。


 しかも、リボンとか付けて可愛く見せようとするから余計にそうだ。

 だから、ついからかってしまう。



 うーん、ここで『美少女』というキーワードが2個も出てきたぞ。


 でも、無垢朗が美少女になれる薬剤を開発したら、真っ先にあいつがやるだろうから、これも違うかもしれない。

 

 ただ、今の俺の美少女の姿は、間違いなくあいつの好みだ。うーん。

 


 話を戻して、俺が部屋に入ると、真っ先に和田さんが俺の所にやって来た。



「状況を報告してくれ」



 いきなりの質問に、回答を持ち合わせていなかった俺は、かなり焦った。



「えーと、なんというか……その追いつめたのは追いつめたのですが……」



 俺が回答に困っていると、突然ジャージ男が会話に割り込んだ。



「消えたんだね」

「そう消えたんですよ。って何で知っているの!?」



 このジャージ男は、あの異世界から来た魔法使いを知っているようで、もしかしたら、俺を美少女にした事と関係があるかもしれない。

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