第4話 【融合】
俺が使えるスキルはまだある。
【収納空間】を開き、『鉄の剣』と『火薬』を取り出す。
「武器なんかは初めてだけど……うん。出来るはずだ」
なんでも初めてのことって緊張するよね。
これまで必要としていなかったから試してことも無かったが、出来るはず。
俺はスキル
これはアイテムから能力や概念を引き出し、もう一つのアイテムに融合するスキル。
今回は『鉄の剣』に『火薬』の【爆破】を融合。
床に置いた『鉄の剣』と『火薬』が光を放ち――そして一つに融合していく。
完成した新しい剣を手に取り、よく視認する。
真っ直ぐに伸びた刃の中心に、赤黒いラインが入った。
俺は剣を左手に持ち、【複製】して右手に現れた同じ武器で壁を切りつける。
爆発。
刃が音を立てて、壁と共に砕け落ちる。
威力は上々。
ただし、剣はもう使い物にはならない。
耐久性に問題ありと、普通ならここで失敗作と判断するところなのだろうが……だが俺には【複製】があるのでそこは問題無し。
壊れたらまた作ればいいだけのことだ。
なんて簡単な問題。
単純明快過ぎて笑えてくる。
右手の壊れた剣を放り投げ、もう一度【複製】。
また右手に現れる剣。
「素材は大したことないが、とりあえずはこれで問題ないだろ」
攻撃力はそこそこだし、このダンジョンを抜けるぐらいならこれでいけるはず。
いけなければ死んでしまうのでいけてもらわなければ困るのだけれど。
だからいけて下さい、お願いします。
これともう一つ俺は使用できるスキルがあるのだが……
これに関してはすでに使用済み。
これらのスキルを駆使することによって俺は、【アイテム師】でありながらそれなりに戦闘をこなせるようになっている。
まだまともに戦ったことないから予想でしかないけれど、でもまぁ問題はないでしょう。
俺はコーラをもう一度【複製】し、ゴクゴク音を立てて喉に流し込んでいく。
「きくぅううううう! 美味い!」
飲み終えた瓶を放り投げ三十秒ほど放置すると、瓶は幻のように消えていく。
「よし。【能力強化ポーション】の効力も残っているし、さっさと帰るとするか」
俺はダンジョンの外へ向かうため、歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇
「…………」
歩き始めて一時間。
問題はないと思っていたが問題はあった。
出口が分からない。
どうやって出ればいいのだ。
完全に俺は迷子になっていた。
逆にもう出口がこちらに来てくれないだろうか。
そう思うぐらい出口の方向が分からなくなっていた。
そういや、方向音痴だったわ、俺。
俺は歩きながら肩を落とす。
食料もコーラも【複製】できるので餓死するようなことはないのだろうけど……生きて出れるような気がしない。
まさか、このままこのダンジョンで孤独死しちゃうのではないだろうな。
迷子になったことにより、驚くほどネガティブになっていた俺。
お願いします。
誰でもいいから出て来て下さい。
そしてそのまま僕を外まで連れてって。
そんな俺の儚い願いが叶ったのか、曲がり角に何かが動く影が見える。
神様! ありがとう!
明日から毎日お祈りします!
三日ぐらいで止めるかも知れないけど許してね。
俺はこんな場所で誰かと出逢えた奇跡に喜びを爆発させ、陰の方へと駆けて行く。
「俺はフェイト! 良かったら入り口まで――」
相手の顔を見てビックリ。
だってそこにいたのはモンスターだもの。
誰だってビックリするよね。
俺はビックリしながらも早とちりした自分が恥ずかしくなっていた。
誰も見ていなかったのが唯一の救いか。
「ゴオオオオオオオ!」
相手はオーガ。
人間よりも大きな体躯に二本の角。
殺人鬼のような瞳と、筋骨隆々といった肉体の手に納まる鋭い大剣。
人を怖がらせる要素しかないこのモンスターのランクは――C。
モンスターには強さによってランク付けされており、EランクからSランクまで格付けされている。
オーガはCランクなので、下から三番目に格付けされているモンスターだ。
並みの冒険者なら、全力で逃げているところだろう。
単独でオーガに勝てる冒険者は多くは無い。
自身の腕試しに丁度いいぐらいの相手だな。
これに勝てなければ、このダンジョンを脱出するのは不可能。
「悪いな。俺がどれぐらいやれるか試させてもらうぞ」
「ゴオオァアアアアアア!!」
オーガは大型の剣を振り上げ、俺の頭を潰すために一気に振り下ろす。
こいつ躊躇も手加減もないな。
ま、それぐらいやってくれた方が自分の力を測るには丁度いいけど。
俺は左手に先ほど作った剣を持ち、右手に【複製】する。
そして相手の大剣の合わせて切り上げる。
剣と剣が火花を散らす。
オーガは怪力の持ち主であるが――力負けは一切していない。
むしろ俺の方が強いぐらいだ。
「爆発しろ!」
右手に持つ剣が爆発を起こし――オーガの大剣を粉々に砕く。
相手は戸惑い、何が起こったのか理解できないていない様子。
なんだ。
やっぱり戦えるじゃないか。
俺は壊れた剣を放り投げ、再度【複製】し、相手に向かって構えた。
「このまま勝たせてもらうぞ」
なんて余裕なのが分かったので俺は、内心喜びを開花させてニヤリと笑みをこぼした。
これで負けたら格好悪くて外を出歩けなやしない。
なので絶対勝たせてもらいます。
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