5.神様、死んでくれませんか?

2018年 01月10日 19時56分 投稿

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*神を信仰している方(特にキリスト教の方)や、神の存在を信じている方は、これを読まないことをお勧めします。読むと嫌な気分になるかもしれません。

*そうでなくとも、これは徹底的に神という存在を悪に仕立て上げたものですから、その辺のことをよく考えて読んでください。


神なる存在は、本当は人間が思っているような者ではない。


これを読んだだけで嫌な気分になったら、開いて読まないでください






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初めまして、神様。



唐突ですが、死んでくれませんか?




神様、あなたの役割って何だと思います?

世界の管理者?それともただの信仰対象?


聖書によるとあなたは世界を創り出したそうですね。

そしてそこの人間という種族に感謝されているのだそうですね。


人間とやらは何も知らないくせに。

あなたが犯したことを考えもしなかったくせに。


あなたは世界を創ってなどいない。

ただ我儘に、自分勝手に、自らに備わった力を使っただけでしょう?

あら、何を驚く必要があるのですか?

知らないと思っていた?

馬鹿も休み休み言いなさい。

全てを見ていた私が知らないわけがないでしょう。


あなたがしたこと、それは、ただの線引き。

存在という概念のなかった世界に「存在の有無」という線を引き、

偶然その線を越えていた者共に対してあたかも自分が世界を創り出したかのように振舞っているだけ。

実際は世界は創られてなどいないし、

あなたに人間からそんな目を向けられる権利などない。

あなただって分かっていたでしょう?

罪悪感にとらわれているから、干渉が中途半端になっているのでしょう?



俯いたって許しはしませんよ。

私たちはずっと苦しんできたのですから。



今日は制裁を与えに来たのですよ。

これが見えるでしょう?

はい。そうです。あなたを殺せるものです。

そんなはずがない?

あなた馬鹿ですか?

あ、馬鹿でしたね。つい言ってしまいましたよ。


自分が何者か、あなたもわかっているでしょう?

そうです。

あなたは唯一、あなたが引いた線の上に立つ存在です。

存在と消滅の丁度合間にいるのです。

そして私たち普通の者が干渉できるのは同等の場所に立つものだけ。

つまりあなたには存在と消滅の間の者にしか干渉されないのです。

もっとも、あなた自身は存在の有無に関わらず干渉できるようですが。



羨ましいですね。

世界に愛されたあなたは。

しかしあなたはその力を自己利益のために使いました。

ただ自分の心を満たすために、多くの者を犠牲にしたのです。

制裁を加えられても、文句は言えない立場でしょう。



おっと、少し脱線してしまいましたね。

話を戻しましょう。



どうしてあなたを殺せるものがあるのか、でしたね。

あなたは世界に愛されていますから、あなたの力は絶対だと思っているのでしょう。

しかしそれは間違いです。

いくら世界に愛されているとはいえ、あなたは完全なる管理人ではありません。

ですから、あなたの線は消えないけれど、線に近づいたり遠ざかったりすることは、一応可能なのですよ。

何を驚いているのです?

まさかあなた、この世界の神だと本気で思っていたのですか?

そんなわけがないでしょう。

あなたは世界に愛されただけの、一人でしかないのですよ。

あなたごときに管理できるほどにヤワな世界ではないのです。

残念でしたね。

あなたはここで殺されるだけです。


どうやって?

この期に及んでまだ言いますか。

見れば大体わかるでしょう?

この刃には、多くの者の「命」が込められています。

その中には私も含まれています。

そんな多くの「存在しない者」が「存在できるちっぽけな可能性」を棄ててまで注ぎ込んで、ようやくこんな小さなものがあなたの立つ場所まで辿り着いたのですよ。

世界中の者がすごいと賞賛すべきことなのです。

ね?褒めてくださいまし。


存在と消滅を隔てる線はあなた自身でもありますから、あなたが死ねば全て解放されます。

あなたの罪は人間に露見し、あなたは極悪人として未来永劫語られ、

私たちは世界を救ったヒーローとして、死んで名を讃えられるのです。



あら、もうお別れのようですね。

私とあなたは死に、世界が救われる時が来ました。

逃げないでくださいよ。

私たちの命と覚悟が込められているのですから。

もっとも、逃げることなど出来はしませんが。


最期にひとつだけ、言っておきます。

あなたはこんな不幸な生き方以外を選べたのです。

もっと幸せに、多くの者に慕われ、褒められて生きることが出来たのです。

それを無下にしたのは自分自身なのですからね。


さあ、それでは




さようなら、神様。

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