2.夜空のサンタクロース

2017年 12月14日 17時47分 投稿

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リンリンリン

シャンシャンシャン

リンリンリン

シャンシャンシャン



鈴を鳴らしながら夜空を滑るソリ。乗っているのは赤服のサンタクロースと…


「ねえおじいちゃん、どうしてこんなボランティア活動をしているの?」


可愛らしい女の子。サンタの孫娘のようです。サンタは女の子を何か懐かしいものを見るような目で見て、何か呟きました。


「どうしたの?」


女の子が可愛らしく首を傾けると、サンタは「なんでもない」と首を振りました。


「ボランティア活動なんて難しい言葉、よく知っていたな紅音。偉いぞ」

「それくらいは知ってるよ。だって小学6年生だもん。いつまでも子供じゃないもん」


ぷくっと頬を膨らませる紅音。サンタは「いつまでも子供じゃない」という台詞にショックを受けたようで、項垂れています。


「そうじゃな。いつまでも可愛い孫ではいてくれないのじゃな。儂としてはいつまでも小さくて可愛い紅音でいて欲しいのじゃが…」

「はぐらかさないで、教えてよ」


紅音は歳をとったおじいさんを遠慮なく揺さぶりました。サンタは「わ、わかったわかった」とすぐ降参しました。


「ボランティア活動といえばボランティア活動なのじゃが、これは代々我が家に受け継がれている風習なのじゃ。12月24日の夜に、子供にプレゼントをあげるというのは」

「ふうん。じゃあ私にもプレゼントくれるの?」

「もちろん。全部配り終えたらの」

「やった〜!」


紅音は両手を上げてバンザイしました。


「ね、ね、どんなのをくれるの?」

「お楽しみ、じゃな。けれど紅音、こうして儂が其方をソリに乗せている理由は、ちゃんと覚えておるじゃろうな?」

「もちろんだよおじいちゃん。たしか、仕事を見学して、将来どんなことをするのか学ぶためだったよね」

「そうじゃ。数十年後には其方もこの仕事をするようになるのじゃぞ。其方だけではない。一族みんなが同じことをするのじゃ」

「お父さんも?お兄ちゃんも?」

「そうじゃ」

「ふうん」


紅音は自分が大きな袋を担いでソリに乗って、子供にプレゼントを配る姿を思い浮かべました。子供が「ありがとう」とはにかんだ笑みを浮かべ、紅音が「どういたしまして」と手を振って去っていきます。


(そうなったらきっと楽しいだろうなぁ)


紅音はクスッと笑いました。


「おじいちゃん、どうして大人にプレゼントはないの?」


紅音が尋ねると、サンタは困った顔をしました。うむむと唸っています。


(紅音、そんな難しいこと聞いたかな?)


紅音が首を傾げていると、サンタは言い訳がましく口を開きました。


「それは…風習だからじゃよ。大人にはプレゼントを配らない風習なのじゃ」

「どうして?大人にも困っている人はたくさんいるよ?その人たちにどうしてプレゼントをあげないの?」


紅音はますます首を傾げ、サンタはより唸るようになりました。


「大人は…大人はプレゼントが貰えなくても、自分で買えるからいいのじゃ。自分で稼いだお金で買っているから、儂らがプレゼントする必要はないのじゃ」

「じゃあ私も、大人になったら自分でプレゼントが買えるよう、働いてお金を稼がないといけないのかな?」

「子供はまだ大人に頼っていいのじゃ。だが、大人になったら自分の力で生きていかないといけないのじゃよ」


(大人って、大変なんだなぁ)


「おじいちゃん。紅音、大人にならないよ。ずっと子供でいる」

「おお!そうか!ずっと紅音が可愛いままで…」


ハッとしてサンタは首をブルブルと振りました。そして紅音の肩に手を置いて、ズイと顔を近づけました。


「紅音、大人にはならなくてはいけないのじゃ。いつまでも子供でいることはできない。いつかはプレゼントを貰わなくてもいいようにならなければならないのじゃ」

「絶対に?」

「絶対じゃ」


紅音はう〜んと考え込んでいます。


「けどな、紅音。大人になるのは悪いことばかりではないのじゃ」

「え?」

「いいことだってたくさんある」

「いいこと?」

「サンタクロースには、大人になってからしかなれないじゃろう?」


ニヤリと笑ったサンタ。紅音は顔を綻ばせました。


「ほんとだ!」


途端、紅音はある一つのことを思いつきました。


「ねえ、おじいちゃん!紅音・・・」

「そうか。それはいいことじゃな。約束できるか?」

「うん!ゆびきりげんまんうそついたら針千本のーます、指切った!」


2人は顔を見合わせ、にっこりと笑いました。



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リンリンリン

シャンシャンシャン

リンリンリン

シャンシャンシャン



鈴を鳴らしながら夜空を滑るソリ。乗っているのはおばあさんのサンタクロースと…


「おばあちゃん。おばあちゃんはどうして毎年子供にプレゼントをあげるの?」


小さな男の子。サンタの孫のようです。


「我が家の風習だからね。あんたもおじいちゃんになったら、同じことをするのよ」


そしてふと、呟きました。


「あの時の約束は守れたかな?」


サンタの頭の中に、かつての光景が蘇ります。


『ねえ、おじいちゃん!紅音、大人になったら、クリスマスにプレゼントを貰えない大人に別のプレゼントを届けるよ!』


物思いに耽っているサンタに、男の子は「ねえ、どうかしたの?」と声をかけました。


「ううん。なんでもない」


サンタは前を向いて、夜空を、街の上ををソリで滑って行きました。変わらない鈴の音を鳴らしながら。



リンリンリン

シャンシャンシャン

リンリンリン

シャンシャンシャン

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