第4話 停電

 バチッ


 そんな音を立て、急に部屋の電気が消えた。


「停電……?」

「すごい雨だもんね……ちょっと、ブレーカー見に行ってくる」

「じゃあ、俺も行く。何かあったら、それこそ俺、死ぬから」

「わ、わかった」


 メイは、さすがに命をかけられてしまっては断ることはできなかった。


 そして二人は部屋の外に出た。


 ヨツバが部屋の外に出ることは、最近では珍しくないが、それより停電というのが珍しかった。


 二人は、いろいろな設備関連ものもが揃っている、倉庫のような部屋に来た。同じ一階にあり、一番近くにいたのはヨツバとメイだった。


 他の子供たちは、雨の日なので大体二階の部屋にいる。


 メイは年長者として、本当なら先にそっちに行くべきなのだが、他にも面倒を見れる人はいると思い、倉庫に向かっていた。


 ここの子供たちは、明確な年齢はわからない。大体、性格や身長などを頼りに年長者などの位置付けが決まる。そもそも、それが普通であり、年を重ねるという概念もほぼ無いに等しかった。


 二人は倉庫の扉を開けた。その扉は、かなり重たかった。


 そして、中にはほぼ何もなく、床には埃がかなり溜まっていた。


「ごほっ、ごほっ……」


 ヨツバは激しく咳き込み出した。


「大丈夫……? ヨツバ」


 メイはヨツバを素直に心配していた。


 元々、咳き込むだけで死にそうに見えるような身体なわけで、あまり無理してほしくないという気持ちがメイにはあった。


 まあ、本人もそれはわかっているし、その中で「大丈夫」と返したということは、本当に大丈夫と信じていいような状況だった。


 本当に大丈夫じゃない時は、絶対に見た目でわかる。


 そして、二人はその部屋の中に入って行った。


 中には、壁にブレーカーが付けられていた。


 ちょうどその上から雨漏りが起きていて、もう使い物にはなりそうになかった。


「ダメだな……これ」

「大分錆びてるみたいだし」


 二人がブレーカーを見て、そんな会話を交わしたその瞬間に、何故か廊下の電気が点いた。


「えっ……?」

「ちょ、怖いんだけど……」


 倉庫の部屋の電気が点いていない(点けていない)おかげか、さらに恐怖は増していた。


 二人は、恐る恐る部屋の外を覗き込んだ。廊下には、誰もいなかった。電気が点いていて、何も変わらない廊下だった。


 メイは、ヨツバと別れ、二階にいる他の子たちの様子を見に行った。


 ヨツバは一人でその廊下を進み、部屋に戻る羽目になっていた。


 扉が開いている部屋から見える景色は、雨が降っているものの、いつもと変わらない森。でも、建物は静寂に包まれ、いつものざわめきが噓みたいだった。


 ヨツバは何事もなく、いつもの部屋に戻って行った。



  ◇ ◇ ◇



 メイはヨツバと別れ、二階にある室内の遊び場を覗いた。そこには、いつもと同じ子供たちがいて、何も変わらなかった。


「メイ、停電、すぐ直ったね」

「そうだね」


 一人の女の子がメイに話しかけてきた。


「みんな、大丈夫?」

「うん! ソラキが大丈夫って言ってくれたから!」

「そっか」


 ソラキはメイと同じように、みんなから兄や姉のように慕われている少年だった。


「ソラキ、ありがとう」


 メイがソラキにそう呼びかけると、ソラキはにこっと笑いながら片手を上げて応答した。


「ヨツバは? 大丈夫かな……?」


 少女はヨツバのことを心配しているようだった。

 一人だけ違うフロアにいて、しかもあんな見た目だ。心配されても無理はないだろう。


「大丈夫……だと思うけど……ちょっと見てくる」

「うん」


 そしてメイは階段を降り、ヨツバの部屋に向かった。

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