第7話


 7月11日、日曜日。

 自室にて。


 正直、自分を騙し続けるのも限界かもしれない。

 今まではなんとかポジティブに乗り切ってきた。


 けど、勉強と違って先が見えないこと、どうあがいても解けない問題に直面することが、こんなにも心をモヤモヤさせるなんて。


 高崎さんに告白されたときは《巻き戻し》が起こる……

 家族、友達、そして小さい女の子からの「好き」という言葉では起こらない……

 この違いはもしかして、恋愛感情があるかどうかってことじゃないのか?


 でもこれ以上検証できる術がない。

 ここにきてボッチでコミュ障の弊害を受けるなんて。


「とても順調に頑張れていると思うのに、なんでそんなにこの世の終わりみたいな難しい顔をしているの?」

「えっ?」


 何かを察したのか、前橋さんが柄にもなく心配してくれているようだ。


「いや、なんでもないよ。ただ、明日から試験だから無事に終わるかなって思っていただけ」

「嘘。顔がずっと引きつっててなんか……辛そう」

「そうだね……。正直参っているんだ。高崎さんの勉強のことじゃなくて、もっと根本の問題だけどね。俺って、つくづく勉強しかできないんだって思ってさ。勉強と言っても教科書や問題集の答えを暗記することしかできない。機転の利かないただの堅物」

「そんなこと————」

「そんなことあるんだよ!」


 つい言葉を荒げてしまう。

 完全に八つ当たりだ。

 女の子と少し話せるようになっただけで、心は全く成長してないじゃないか。


「ごめん。でも今は一人にしてくれ」

「……」


 無言のまま扉の外に行く前橋さん。

 さすがに怒っているよな、と横顔を確認する。



 しかし、そんな彼女の姿は、予想を裏切った。



 今まで無表情を貫いてきた前橋さんだけど。

 もしかしたら誰にでも分かるじゃないかってくらい……


 浮かない顔をしていた。




 そして迎えた試験結果返却日。

 またこの日が来てしまった。

 本当なら嬉しい日のはずなのに、なぜか喜べない自分がいる。

 告白は何回されてもドキドキするし、胸が熱くなる。


 でも—————



「太田君のことが、好きです!」



 高崎さんのこの言葉を聞くのが、ものすごく怖くなってしまったんだ。


 ………………………………


 ………………


 ……


 …

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